スタートスペシャル
「河原町署の屋上を訪れた京都府警本部長は、何故スーツ姿のまま射殺されてしまったのか?」
警務課長の近藤(本田博太郎)でございます。何かと物騒な事件が多い今日この頃。誠に胸が痛みますが、我が河原町署も例外ではございません…。つい先日も、二条大橋で女性が乱暴され、怪我をさせられるという事件が起こってしまいました。事件発生の翌日には、平松刑事(宇梶剛士)らが容疑者・落合信二を任意同行したのですが、どこからかこの件を聞きつけた池永副署長(船越英一郎)は興味津々のご様子。ふ、副署長…。足が速いだけでなく、耳までも早くていらっしゃる! まったく…そのスピーディーさ、本来の任務である決裁業務に生かしていただきたいものです。しかしまぁ、幸いなことに、落合があっさりと自白したため、いつものように副署長が捜査に余計な首を突っ込まれることもなく、事件は迅速に解決いたしました。
ところが! 私が胸をなでおろしたのも束の間。落合の指紋が、20年前に起きた「東山女子高生殺人事件」の被害者・南智子さんの鞄に付着していた指紋と一致したのであります! 実はこの事件、発生から11カ月もの月日を要したものの、すでに解決しておりました。採取された別の指紋が、当時大学生だった杉原洋一のものと一致。取調べの結果、彼が自白したからであります。しかし当時、被害者の衣服に付着していた毛髪2本については鑑定されなかったとか。藤原署長(萬田久子)はそこに引っかかられたのでしょう。念のため、毛髪のDNAを落合のものと照合するよう命ぜられました。
その矢先のことです。こともあろうに我が河原町署の屋上で、京都府警のトップであらせられる比留間本部長が射殺されてしまったのです! あぁ、何たること…。これは一大事であります。しかも時を同じくして、『週刊タイムス』の記者・島(的場浩司)が匿名の男から「20年前の殺人事件の真実を教える」との電話を受け、署の屋上に呼び出されていたことが判明。しかも、DNAが20年前の遺留品毛髪と一致したことを受け、落合が単独で南智子さんを殺害したことを認めたのです。20年前の事件は冤罪だった! しかも、本部長殺しとも関連が…!? 事件発生直後は特捜本部の予算配分とマスコミ対応に追われ、ご立派に職務を遂行していた副署長でしたが、こうなっては我慢が効くはずもございません。射殺事件捜査のために京都府警からやって来られた黛一課長や、老体に鞭打って全身全霊で引き止めようとする私を振り切り、またもや捜査に首を突っ込み始められたのです…。
やがて、副署長は比留間本部長が射殺されたとき署内にいたと見られる元刑事・滝沢徹、さらには本部長と黛一課長までもが「東山女子高生殺人事件」の捜査本部にいた事実を掴まれました。しかしその件に関しては、黛一課長の歯切れがどうも悪いのでございます。やはり20年前に何かがあった!?――副署長が引っかかるのも無理はございません。しかも、時効成立後の冤罪発覚で智子さんの兄・南篤弘さんが抱えてしまった複雑な思いにお触れになった副署長。「俺の我慢もここまでだ!」。
もはや私の力もこれまで…。これ以上、副署長の正義感を抑えつけることはできません。副署長は滝沢の家へと向かわれました。ちょうどそのころ、滝沢は黛一課長を呼び出していました。しかも「俺が比留間本部長を殺した」と言い残し、姿を消してしまったのであります!即座に緊急配備が敷かれ、家宅捜索も行われました。そこで、島が書いた過去の糾弾記事が見つかったのです。どうやら、島を我が署の屋上に呼び出したのが滝沢だったことは間違いなさそうです。が、同時に不可解な物品も押収されました。何者かのDNA写真と20年前に流行したマスコット人形、薬局チェーンの販売記録用紙であります。しかも、販売記録用紙の日付は「東山女子高生殺人事件」発生日! のちに判明したのですが、被害者の死亡推定時刻にはマスコット人形が売られていました。これは何を示唆するのか? 一刻も早く滝沢を見つけ出し、真相を聞き出さねばなりません。ところが…。
数時間後、腹部を撃たれた滝沢が繁華街で息絶えたのです! 翌日、滝沢と比留間本部長を撃ったのが同じ銃だったことが判明。滝沢自身が銃を発射していたことも分かり、滝沢が本部長を殺し、自殺した線が濃厚になりました。しかし、銃弾からは滝沢以外の指紋、銃のシリンダー部分からは金色の糸も発見されていました。さらに、副署長は妙な目撃談を入手されたのです。重傷を負ったまま車で繁華街に辿り着いた滝沢は、死ぬ間際に「もっと遠くに…」と呟いていたとか。自殺だとしたら、なぜ遠くへ移動する必要があったのか!?さすがの副署長も、今回ばかりは易々と謎を解けないようであります…。
そんな折、冤罪が判明した杉原が保釈に…。副署長と黛一課長は、杉原の妹でちりめん細工の仕事をしてらっしゃる杉原由美子さんのもとへ謝罪に向かわれました。しかしこのとき、彼女はなぜか比留間本部長が20年前の事件の捜査員だったという未発表の事実を御存知だったそうです。何でも杉原の拘留後、彼女は本部長から随分酷い扱いを受けたとかで…。さらに、滝沢宅にあったDNA写真が落合のものと一致。販売記録用紙が大阪支店のものだったことも判明いたしました。その矢先、副署長は15年前に銃を買った女性がいたことをお知りになったのです!やがて…副署長の中ですべてがつながったようです。私が警務課に戻ると、副署長はすでに消えた後でございました…。
副署長は由美子さんのもとを訪れておりました。比留間本部長を殺したのも、滝沢を殺したのも彼女だったのです!すべては20年前の事件から始まっておりました。杉原は事件発生時に大阪の薬局で、妹にプレゼントするためのマスコット人形を買っていた――そのことを滝沢は突き止めていたのです。しかし、すべてが明らかになったのは杉原が自白した後。真実は比留間本部長によって握りつぶされてしまいました。つい先日、滝沢からその事実を聞かされた由美子さんは、咄嗟に本部長がいらっしゃる京都府警へ。そこで、島を立ち合わせた上でDNA鑑定の結果を突きつけようとした滝沢に呼び出された本部長を追い、河原町署の屋上へとやって来たそうです。しかし、本部長は由美子さんのことを覚えてらっしゃらなかった…。彼女は思わず銃を取り出し、発砲したのでした。一方、滝沢は冤罪を生み出してしまったことを悔やみ続けていた。後日、彼は由美子さんを呼び出して自らの腹部を撃たせ、自殺に見せかけるよう工作したのです。それが彼の選んだ償いの方法でした…。
やがて、由美子さんは自首しました。しかし、警察が人の心に芽生えさせてしまった苦しみや悲しみ、恨みは簡単に消えるものではございません。副署長は黛一課長と共にその重みと向き合い、苦しんでいかれる覚悟をお決めになったご様子。さすが副署長、私が将来の捜査一課長になるべき人物と認めたお方でございます。副署長というお立場である現在、捜査に足を突っ込むのは如何なものかとは思いますが…。まぁ、過ぎたことを申し上げても仕方ありません。その代わり、溜まった決裁業務はしっかりやって頂きます。いいでおすな、副署長?
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