「火傷のある男は、なぜ河原町署の拳銃保管個に藤原署長の息子を人質にとって立て篭もったのか?」
警務課長の近藤(本田博太郎)でございます。私、不覚にも拳銃保管庫で刃物を持った不審な男(山崎裕太)に襲われてしまいました…。男はこともあろうに私の額を切りつけ、私から保管庫のカギを奪おうとしたのであります!
その男は私を襲う直前、池永副署長(船越英一郎)とロビーで出会った男でした。その日、副署長は地域課の中村巡査部長(天宮良)の娘さんのことで、藤原署長(萬田久子)のもとへ相談に訪れていました。中村巡査長は心臓移植を必要とする娘さんのため、手術費用1億数千万円を用意しなければなりませんでした。しかし、警察官は費用のための募金活動を行なってはならないのです。何とかならないものか――副署長は署長に掛け合いましたが、署長は「中村巡査長は募金のために警察官を辞めるか、手術を諦めて警察官を続けるか、選択肢は2つしかない」とおっしゃられたそうです。副署長が男を目撃したのは、その直後のことでした。ソファーに座っていた男は具合が悪そうに見えましたが、「連れを待っているだけだ」とのことでしたので、副署長はその場をお離れになったそうです。
男は私を襲撃した後、保管庫内にバリケードを築いて立て篭もりました。しかも、人質を取っていることが判明したのであります! その人質とは、なんと副署長に相談ごとがあって訪ねてきた署長の息子・拓海くん(春山幹介)でした!男の目的とは? そして、拓海くんの安否は…!? 嗚呼、署長のいたたまれない胸のうち、それを思うたび私の心を襲う痛みに比べれば、額の傷の痛みなど痛みのうちに入りません…。
やがて、男は弾丸を用意するよう要求してきました。しかし弾丸を渡せば、京都府警から駆けつけたSITとの銃撃戦になり、拓海くんの命に危険が及びます。副署長は拓海くんを守るため、男との交渉を申し出ましたが、署長は弾薬庫の鍵を渡して犯人の出方を見極める決断を下されました。しかし鍵を渡してもなお、犯人の目的は一向に分かりません。居ても立ってもいられなくなった副署長は、男が座っていたロビーのソファの指紋を採取することにしました。そして、なぜか中村巡査部長を捜すため、外出されたのです!
そのころ指紋の照合が完了し、立て篭もった男が元暴力団員の石橋厚一郎であることが判明しました。石橋は喘息持ちの息子さんと二人暮らしだったとか。しかし半年前、息子さんは自宅アパートで亡くなったといいます。どうやら、石橋には息子さんを入院させる金がなかったようです。石橋は自分のせいで息子さんを死なせたと思い、責任を感じたのでしょう。息子さんの死後は抜け殻のようだったそうです…。
一方、副署長はやっとのことで中村巡査部長を捜し当てました。実は石橋、昨夜「自殺したい」と交番に電話をかけてきていたのです。その電話に応対したのが中村巡査部長でした。中村巡査部長によれば、石橋は以前も酔っ払いながら、同じ内容で電話をしてきていたとか。副署長は石橋が中村巡査部長を追って河原町署に侵入し、偶然保管庫に辿り着いたと考えておられました。石橋の動機を解明するためには、中村巡査部長が彼の電話にどう応対したのかを知る必要がある!――副署長はそう思われたのです。しかし、中村巡査部長はなかなか口を開こうとしませんでした…。
そんな中、拳銃を構えた石橋が保管庫から出てきました!すると、署長は石橋に拓海くんの身代わりになることを告げたのです。親として、子どもにできることを精一杯してやらなければならない――そう石橋に話す署長。その言葉を聞いた石橋は、「やっぱりオレはダメな父親だったんだ」と漏らし、拳銃を自らの側頭部に押し当てたのであります。予期せぬ展開に、署長も副署長も一瞬立ちすくみました。そこへ、中村巡査部長が現れたのです! 「よせ! 俺が言ったことは間違いだった!」。
娘さんのことで頭が一杯だった中村巡査部長は、石橋からの電話を受けた際、「死にたい奴は死ねばいい」と口走ったといいます。自らの発言を悔いた中村巡査部長は謝罪しながら、石橋に近づいていきました。しかし、石橋は自殺を思いとどまろうとせず、引き金に手をかけたのであります。すると、副署長が石橋に息子さんとうつる写真を見せました。「わかったよ」――。実は以前、石橋親子は中村巡査部長の警察官らしい勤務態度を目にし、感銘を受けていたのです。中村巡査部長なら、自分の話をちゃんと聞いてくれる――息子さんを亡くした石橋は、すがるような思いで中村に二度も電話をしてきたのでした。ところが、中村巡査部長の答えは石橋を失意の底へと陥れた! それが今回の事件を引き起こしたのであります。
やがて石橋は投降し、身柄を押さえられました。拓海くんも無事解放され、署長も大きな安堵感に包まれたご様子。一方、中村巡査部長は娘さんの手術代を募金で工面するため、辞職することを決意しました。親の子を想う気持ちに触れ、私の心が温まったことは言うまでもありません。副署長には一刻も早く決裁業務の遅れを取り戻してほしいところではありますが、今日ばかりはあまり急かすのは止めておくとしましょう。これも一種の親心ということで…。しかし、明日からはジャンジャンバリバリ判を押して頂きますよ!よろしいおすな、副署長?
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