第2話 2008年7月13日
「命を金で買うとき」 8年前に医者を辞め、現在は市役所職員である 森山航平 (竹野内 豊) は、病院再建を手伝って欲しいという看護師・田中愛子 (菅野美穂) の言葉をさえぎるように、航平は「俺には、資格がない」と答えた。
赤字30億を抱えた西山室市民病院を建て直すために動き出した病院再建プロジェクト。町では航平が元医者であることが噂になっていた。副市長の 蓮見洋治 (陣内孝則) はプロジェクトにとって心強い味方だと前向きだ。プロジェクトのリーダーであり脳外科医の 遠藤紗綾 (緒川たまき) に愛子は頭を下げていた。いくら患者の命を救ったからとは言え、看護師が医療行為をすることはできない。処分を覚悟している愛子に「看護師がメスを握ったとなれば病院の問題になる」と紗綾は他言しないように強要する。
夏休みに入り西山室市に帰省した愛子の妹・田中七海 (黒川智花) が自転車とぶつかりそうに!?そこにスクーターで通りかかった航平。市民病院に運ばれた七海のもとへ血相を変えて愛子がやってくるが、怪我をしたのは航平だった。七海は無傷であったが、何故か頭痛を訴える。その時、総合受付では大騒ぎが起きていた!
紗綾が利益の上がらない診療科を閉鎖すると言い出したのだ。小児科、耳鼻咽喉科、泌尿器科、精神神経科、皮膚科、婦人科、眼科、救急科は7月末まで。非難ごうごうの市民に対し、紗綾は医者不足によるやむを得ない処置と説明する。
しかし、「市民病院だろ。俺たちの税金で食ってんじゃねえのかよ!」と怒りの収まらない市民。「税金でまかなえるほど医療は安くありません。あなた方のそういう意識が病院を潰すんです」と紗綾。駆けつけた航平、愛子らは複雑だ。さらに、会計カウンターでも騒ぎが起こる。保険料を払っていないために “保険証” を持たない 佐藤 (田中要次) は、全額負担となる医療費を払えないと言い張っていたのだ。「この病院は、金が払えなかったら怪我人を面倒見ねえのかよ!」と怒り叫ぶ佐藤。紗綾は「警察を呼びなさい」とあくまで冷静だ。結局、佐藤は警察に連れられていく。
紗綾の対応に納得のいかない愛子は事情を聞いて相談すべきと詰め寄るのだが、去年一年間の未払いの医療費が2億円を上ると聞き愕然とする。お金のない患者は相手にしなければいいという紗綾。愛子は、命をお金で買うような考え方に納得できないでいた。
そんな愛子の気持ちが理解できるものの、航平は自分には何の権限もないと関わろうとしない。愛子は「資格がないって医者としての資格ってこと?資格がないって、本当はそれをやりたいって気持ちがあるから出てくる言葉なんじゃないの?」と航平を叱咤する。しかし、航平は何も言わずに背を向けて歩いていく。
市役所・市民窓口課で働く航平に七海が声をかける。弁護士になりたいと嬉しそうに夢を語る七海だが、またしても頭痛を訴える。そして、七海の頭痛はこの日だけではなく、頻繁に起こっていると航平は知る。
七海は航平の勧めで検査を受けることに。内科の検査のほかに、CTで脳の検査を行う七海。医師と看護師の態度に七海は自分の病気がただ事ではないと察する。
七海の検査後、愛子は外科診察室に呼び出されていた。内科医の 片岡庸一 (田中 実) と非常勤脳外科医・笹塚努 (須田邦裕) から、七海の脳に先天性の動静脈奇形があると聞かされる。すぐに手術するしか助かる方法はないという笹塚。
愛子は紗綾に七海のことを相談する。手術をするかはグレーゾーン、若い分、破裂の危険性も高くなるから早めの手術を勧めるというのが紗綾の見解。不安げな愛子に紗綾は「どの病院で手術をするかはあなたの自由。私が再建した脳外科専門病院なら、優秀な人材も設備も揃っている。あなたが嫌いなセレブ病院だけどね」と告げる。
航平は紗綾に七海の手術の担当をして欲しいと頼むが、バイトのドクターである笹塚がこの病院の現実だといって聞き入れない。極端すぎる紗綾のやり方に、「セレブ病院ではなく、市民病院再建として医者を増やすことを検討して欲しい」という航平。
「医師免許はいったん取れば更新の必要はない。あなたみたいに8年前に辞めた人間でも堂々と医者を名乗れる。でも私は医者だとは認めない」と紗綾。言葉を失った航平は先日の帝王切開のことを思い出していた。その思いを振り切るように「医者に戻るつもりは、ありません」と紗綾に告げる航平。紗綾は航平の過去を調べるように蓮見に告げる。
日勤明けで帰宅する愛子。玄関先で笑顔を作り部屋を覗くが七海の姿がない。テーブル上の七海の本を片付けていた愛子は、「脳の病気」という専門書に付箋がはってあることに気づく。いてもたってもいられなくなった愛子は七海を探すために家を飛び出す。
海辺で勉強をしている七海に航平が声をかける。航平はびっしり書き込まれた七海のノートを見て、自分も同じようにノートに書いて覚えたと話す。自分が弁護士になろうと思ったのは巨悪に敢然と立ち向かう女弁護士になりたいからと冗談っぽく微笑む七海。それを聞いて笑顔になる航平だが、七海の表情が曇っていることに気づく。
そして、「私、大変な病気なんじゃないですか?」七海は、航平に、いくら勉強しても死んでしまったら意味がないと、自分のノートを破り捨てる。破られたノートを拾いながら航平は、“自分が医者になったのは母親が重い病気で死にそうになったときに、一人だけ諦めずにいてくれた先生がいたからだ”と話す。
「諦めたらそこで終わりなんだ」という航平。しかし七海は、航平は医者を辞めてしまったのだから、諦めたのと同じだという。そこに、蒼白な顔をした愛子が現れる。「死にたくない」と泣く七海。「あたしが絶対に助ける」と七海を必死に抱きしめる愛子。航平はそんな二人を心配そうに見つめていた。
その晩、航平は病院事務・仙道 (岸部一徳) と将棋を指していた。航平は仙道から、愛子と七海の母親が事故で亡くなってしまい、愛子が母親代わりとして七海を育てたことを聞かされる。航平は仙道に、自分は8年前に責任を取らずに逃げたのに、「諦めるな」と七海に告げたことを後悔しているという。
しかし仙道は「人間、ときには逃げることも必要。どんどん逃げて、傷が治ったら、またやり直せばいい」と微笑む。ナースステーションでは看護師たちが航平の取り上げた赤ん坊の面倒を見ていた。生命力に満ち溢れすやすやと眠る赤ん坊、その名は “太陽” に決まったと和子が航平に告げる。
その翌朝、愛子は紗綾に脳外科の専門病院を紹介して欲しいと頭を下げる。「私のやり方が正しいと認めるの?命をお金で買うのね?」紗綾。愛子はためらいを見せるが、意思を固め「買います」と告げる。ならば、妹さんの命は私が必ず助けると紗綾。
愛子は「医療って、やっぱり平等じゃないんだね」と航平に本音を呟いた。紗綾が再建した脳外科専門病院。紗綾はある病室に目を向けていた。「今日はお入りにならないのかね?」院長の言葉に紗綾は「打ち合わせのついでに寄っただけ」と通り過ぎる。仕事明けの愛子が帰宅すると、七海がテーブルの下に倒れていた!救急車を待つ間、愛子は混乱しながらも航平に電話をかける。「七海が倒れた!」震える愛子の声に、航平は急いで市民病院へ向かう。
同じくして、ナースステーションでは七海が倒れたことを知り、看護師たちが遠藤・薮内・笹塚に必死で電話をかけるが、誰も捕まらない。片岡が心当たりのドクターに電話をするが、どんなに早くても1時間以上はかかるという。その時、七海が運ばれてきた。片岡が容態を確認するが、かなり危険な状態。「専門医がいない状態では手に負えない、よそに回そう」と片岡。しかし、近くに脳外科専門の病院は存在せず、このままでは病院を探している間に七海は手遅れになってしまう。ストレッチャーで運び出されようとしている七海を愛子が必死に阻止している。
そこへ航平がやってきた。「動かすのは危険だ。助けるにはここで治療するしかない!」。片岡を押し切り、航平は七海を処置室へ戻すよう促した。そして、動揺する愛子を航平はしっかりと見つめて何かを告げるように頷いた。航平と片岡が七海の処置をしていると、紗綾から連絡が入る。しかし、「他の病院へ回しなさい」と紗綾は指示をする。
ふと七海を見やる航平、その手が小さな紙片を握り締めていることに気づく。それは七海が勉強していたノートだった。「たとえ1パーセントでも可能性が残っているなら、そこに賭けるべきだ。死ぬかもしれないその瞬間も、彼女は諦めていない。患者が諦めていないのに、医者が先に諦めるんですか!」航平は紗綾に質す。
「あなたは一度、患者を引き受けた。必ず助けるとい言ったんだ。最後まで責任を持て!!」航平の怒りにも似た感情が声になって現れる。すると…。「開頭手術の準備をしておきなさい」紗綾が口を開いた。紗綾の電話指示で、手術の準備に取り掛かる航平。「5分後に着く。そのまま維持して」紗綾の電話が切れ、安心した空気が流れた手術室。がしかし、七海の容態が急変する。緊迫する手術室内、低体温マットで七海の容態が落ち着くのを待つ航平と看護師たち。けれど変化はない。
すると何かを感じ取ったかのごとく、航平が七海に叫ぶ。「七海ちゃん、弁護士になりたいんだろ。巨悪に立ち向かいたいんだろ、諦めちゃダメだ!」その声が七海に届いたのか、容態が安定していく。そこへ紗綾が駆け込んできた!七海の手術が始まった。
手術室前にて、ノートの紙片を握りながら祈るように座っている愛子を元気付けている和子。すると、手術室のドアが開き航平が出てきた。手術の結果を聞くことが出来ない愛子に、そっと微笑む航平。声にならない声で礼をいい、ただただ泣く愛子。そんな愛子を航平は笑顔で見つめていた。
そして、何かを決意したかのごとく航平は歩き出す。回復室にて眠る七海を愛子は熱心に看病している。目を覚ます七海。状況が把握できない七海に、愛子はテープで補正したノートを差し出す。「七海、きっと今までも、私の知らないところですごく頑張ってきたんだね」涙を流す愛子は七海の手をしっかりと握り締める。
病院ロビーにて、紗綾と蓮見が深刻に話をしていた。航平が医者を辞めた理由を蓮見が調べ出したのだ。航平が医者を辞めたのは勤めていた病院で患者を死なせた“医療ミス”が原因だという蓮見。紗綾は驚きを隠せずにいた。航平は病院屋上で空を眺めていた。
そこにやってくる愛子。「資格がないっていっていたけど、医者の資格って、目の前に患者がいて、その人を助けたいと思うかどうかなんじゃないかな。あなたはもう、医者だと思う」愛子の言葉に航平は何も言おうとしない。
しかしやがて…。
「君のいう通り、医療は平等じゃないのかもしれない。でも命の重さは平等だと思う」航平の言葉に、泣き出しそうな愛子。
「この市民病院の再建を手伝わせてくれないか……… 医者として。」
航平は愛子を優しく見つめて言った。
第1話 2008年7月06日 「医療は人か金か!?」 16.8% 15分拡大
第2話 2008年7月13日 「命を金で買うとき」 13.9%
第3話 2008年7月20日 「暴かれる医療ミス」 13.5%
第4話 2008年7月27日 「加害者と被害者」 10.8%
第5話 2008年8月02日 「涙の告白〜笑顔」 10.3%
第6話 2008年8月10日 「訴えられた病院」 10.5%
第7話 2008年8月17日 「見捨てられた患者」12.9%
第8話 2008年8月24日 「看護師長、倒れる」第9話 2008年8月31日「妻の死と病院閉鎖」10.4%
第10話(最終話) 2008年9月7日
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