概要
ダニエル・キイスの同名小説を原作に、野島伸司が脚本監修を務めるヒューマンドラマ。6歳児並みの知能のまま成長した28歳の青年・白鳥咲人(山下)が、手術によって天才的な知能を手に入れたことで味わう愛と憎しみ、喜びと孤独を描く。花の配送センターで働く心優しい咲人は、動物実験で驚くべき知能を得た白ねずみ・アルジャーノン、その研究の被験者を探す望月遥香(栗山千明)と出会い、人生が大きく動きだす。
原作
『アルジャーノンに花束を』(アルジャーノンにはなたばを、Flowers for Algernon)は、アメリカ合衆国の作家ダニエル・キイスによるSF小説。1959年に中編小説として発表し、1966年に長編小説として改作された。本作を原作として映画、同名のテレビドラマ、舞台作品などが制作されている。
ストーリー
花の配送センター「ドリームフラワーサービス」で働く知的障害者の白鳥咲人(山下智久)は、同僚の柳川隆一(窪田正孝)と共に、望月遥香(栗山千明)の住むマンションにバラの花束を届けに行く。しかし、咲人が6歳児並みの知能しかないことを知らない遥香は、その言動に驚き、騒動が起きる。
一方、遥香が勤める「脳生理科学研究センター」では、チームリーダーの蜂須賀大吾(石丸幹二)による知的能力を向上させる研究が進み、白ねずみ・アルジャーノンでの動物実験が成功。人間での臨床試験に入ろうとしていた矢先に、アルジャーノンが逃げ出してしまう。
キャスト(2015年版)
()は原作での該当人物
白鳥 咲人〈28〉(チャーリイ・ゴードン)
演 - 山下智久(幼少期:大山蓮斗)
主人公。28歳だが、知能は6歳児並みの知的障がい者。周囲の人間のからかいまで友情の証と受け取る人のいい好青年で、ドリームフラワーサービスで働いている。あいこと愛嬌を掛けた「あいきょでしょ??」が口癖。
母に喜んでほしい、みんなと対等になりたいという思いから賢くなりたいとずっと願っていたが、天才ネズミ・アルジャーノンとの出逢いをきっかけに知的能力を向上させる脳手術を受けることになる。
手術を受けたことで車の運転免許を習得するなど充実した毎日を過ごしていたが、それまで理解出来なかった悲しい事実を知り人を見下すようになる。しかし、遥香がそれに心を痛めて研究所を去ったことで他者を思いやる気持ちが戻り始めていく。
梨央の病気の治療法を解明し、彼女の手術に成功するが、薬と手術の副作用で手術前の知能に戻ってしまう。その後は「対等の友達」である柳川、檜山と共に海辺でハンバーガーショップを立ち上げ、客引きをしている姿が描かれている。
望月 遥香〈31〉(アリス・キニアン)
演 - 栗山千明
脳生理科学研究センターの研究員。正義感が強く、心優しい性格。
咲人から「世界で一番好きな女の子」と好意を持たれていたが、蜂須賀に異性として好意を抱いていた。しかし知能の発達に伴って性格が変化した咲人を見て彼に疑問を持ち、研究所を退職。真心を取り戻し始めた彼に惹かれ、両想いになる。
薬の副作用で咲人が元の知能に戻ってしまうことを知った際は、退行を止めるべく奮闘する。最終的に窓花の助言を踏まえ、咲人を想いつつ、一度距離を置いて全てを受け入れる覚悟ができるまで待つことを決める。
柳川 隆一〈25〉
演 - 窪田正孝
咲人の同僚。頭も良く仲間内の中心的存在で、その気になれば仕事の能力も高いが、世間に対してどこか斜に構えた投げやりな態度をしている。
父の浮気を機に買い物依存症になった母を助けるために詐欺に手を出し、刑務所に服役した過去を持つ。人の好い咲人を利用したり当たり散らしてしまう事もあったが、次第に「対等の友人」として友情を深める。
最終回で小久保の言葉を聞いて咲人の知能が元に戻ってしまった事を察知し、檜山と共にドリームフラワーサービスを辞職。アルジャーノンの墓で彼を見つけた。その後は三人で海水浴場でハンバーガーショップを始め、接客を担当している。
檜山 康介〈24〉
演 - 工藤阿須加
咲人の同僚。無口で無愛想なため人からは敬遠されがちだが、実は誰よりも心優しい青年。
家族に暴力を振るう父を殺めてしまい服役。出所後にドリームフラワーサービスに就職した。咲人とは寮で同室であり、何かと彼を気にかけている。
梨央に好意を抱いていたが、彼女の病気が咲人によって完治した事で彼女の幸せを願い、「逃げ込んでいた絵本は閉じられた」と別れることを選ぶ。
その後ドリームフラワーサービスに訪れた小久保の言葉を聞き、咲人の知能が元に戻ったことを察して柳川と共に辞職。アルジャーノンが埋葬されている場所で咲人を見つけ、「対等の友達」として彼らと行動を共にすることを決意。3人で海水浴場でハンバーガーショップを立ち上げ、製造を担当している。
鹿内 大〈38〉
演 - 勝矢
咲人の同僚。班長で傷害の前科あり。普段は大らかで面倒見が良いが怒ると見境がつかない。
神田 勇樹〈23〉
演 - 前田公輝
咲人の同僚。口の悪いお調子者で鹿内程ではないが短気。女好きで度々異性関係でトラブルを起こしてしまい、夜間外出を禁じられたことがある。
波田 光佑〈23〉
演 - 斎藤嘉樹
咲人の同僚。
小久保 一茂〈23〉
演 - 菊池風磨
脳生理科学研究センターの研究者。ぼさぼさ頭と瓶底眼鏡が特徴。アルジャーノンを可愛がる繊細さと周囲を常に皮肉る辛辣さを併せ持つ。
アルジャーノンの事を大切に想っており、副作用で死んだ際は解剖に唯一反対し、咲人と共に森へ行き彼の墓場を作る。その後は莉央を救うためのプロジェクトの一員となり、手術の成功に貢献する。
河口 梨央〈21〉
演 - 谷村美月
玲二の娘で興帝メディカル産業の社長令嬢。東京麗徳女子大学に通う女子大生。清楚で純真無垢。咲人に好意を抱く。
小出 舞〈21〉
演 - 大政絢
東京麗徳女子大学に通う女子大生。梨央の親友で同級生。意地っ張りでプライドが高く、周囲には刺々しい印象を与えるが内面は優しく多感なごく普通の女性である。
杉野 史郎〈41〉
演 - 河相我聞
脳生理科学研究センターの研究員。蜂須賀センター部長に次ぐ実力者だが、弱気で心配性な性格。
白鳥 久人(マット・ゴードン)
演 - いしだ壱成
咲人・花蓮の父。原作と異なり故人。高校の後輩である竹部が重病に侵された際、惜しみなく自身の腎臓を提供する。この事で余命宣告を受け、中学3年の咲人を竹部に預ける。
優しい性格で、咲人に障害があることを知ってからも彼の味方であり続けた。
白鳥 窓花(ローズ・ゴードン)
演 - 草刈民代
咲人・花蓮の母。非常に真面目な性格で、咲人のことを大切に思っているが彼の持つ障害を受け入れられず、冷たい態度を取ってしまう。
花蓮の将来のために、咲人を別々に生活させるという苦渋の決断をした。これらのことがきっかけで咲人は賢くなりたいと願うようになった。
河口 玲二〈61〉
演 - 中原丈雄(特別出演)
大手製薬会社「興帝メディカル産業」社長で梨央の父。蜂須賀の研究センターとは親密で深いパイプを持ち、スポンサーとして多額の研究費を投じている。
竹部 順一郎〈45〉(アーサー・ドナー)
演 - 萩原聖人
下町にある花の配送「ドリームフラワーサービス」の社長。咲人たちが勤務している。咲人の父・久人は学生時代の先輩で、自らの過ちで腎臓を患い久人に提供してもらった過去を持つ。
後に障害がある咲人や保護観察処分の柳川らを社員として受け入れ、仕事を通じて社会人として大切なことを教えている。咲人の幸せを願い、彼が再び家族と暮らせるよう度々家に出入りしていた。それを知能が発達した咲人に誤解された事で怒りに任せて彼を解雇するが、それ以後は気にしておらず、謝罪に訪れ全てを打ち明けた彼に新人と同室にしていた理由を明かし、彼を笑顔で送り出す。
蜂須賀 大吾〈50〉(ジェイ・ストラウス博士)
演 - 石丸幹二
脳生理科学研究センター部長。チームリーダーで、脳医学研究の第一人者。常に冷静沈着であり、人類の知能向上にすべてを捧げている。
当初は咲人を被験者として見ており、遥香への恋心を利用するなど手段を選ばないきらいがあった。しかしアルジャーノンと咲人に異変が起きた事で自分の開発した薬に欠陥があると知り、咲人と共に強化開発すべく奮闘する。一連の出来事を経て咲人からは「もう一人の父」として尊敬され、彼の退行後は罪悪感から自分の開発した薬を投与しようとしたが、研究チームのメンバーに止められ新たな研究を始める事を決心した。
白鳥 花蓮(第6話 - )(ノーマ・ゴードン)
演 - 飯豊まりえ
咲人の妹。窓花と二人暮らしで、咲人を見捨てたことに苦悩する彼女を支える。子供の頃は兄・咲人のことで友人から馬鹿にされていたため、彼を憎んでいた。現在は保育士を目指す大人しい性格。
小沼 由美子
演 - 松本若菜
脳生理科学研究センターの研究員。
スタッフ(2015年版)
原作 - ダニエル・キイス / 小尾芙佐訳『アルジャーノンに花束を』(ハヤカワ文庫)
脚本監修 - 野島伸司
脚本 - 池田奈津子
音楽 - 千住明
演出 - 吉田健、酒井聖博、松田礼人
編成・プロデューサー - 韓哲
プロデューサー - 佐藤敦司
製作 - ドリマックス、TBS
主題歌 - ベット・ミドラー「ローズ」(アトランティック・レコード / ワーナーミュージック・ジャパン)
各話あらすじ (2015.4.10 - 2015.6.12)全10話 平均視聴率 8.53%
第1話 2015年4月10日「無垢な夢、愛友情がもたらす奇跡」 ※15分拡大(22:00〜23:09)
28歳だが、知能は6歳児並みという知的障がい者の白鳥咲人(山下智久)は、少年刑務所に入っていたなど“訳アリ”な若者が集まる花の配送センター「ドリームフラワーサービス」で働いていた。ある日、咲人は同僚の柳川隆一(窪田正孝)と軽トラに乗り、望月遥香(栗山千明)の住むマンションにバラの花束を届けに行く。遥香は配達人の咲人が精神遅滞者であることを知らないため、咲人の対応に驚き、警察を呼ぼうとしてしまう。
第2話 2015年4月17日「対等な友情、親友のために溢れでる涙」
今日は、白鳥咲人(山下智久)が勤める花の配送センター「ドリームフラワーサービス」の給料日。社長の竹部(萩原聖人)の方針により、柳川(窪田正孝)や檜山(工藤阿須加)ら従業員は、毎月、現金で給料を渡される。笑顔で給料を受け取る咲人に、「何か買うのか?」と檜山が尋ねると、咲人は「おりこうになって、めんきょをとります」と答える。
第3話 2015年4月24日「超知能への手術!世界一好きな人の為」
遥香(栗山千明)の推薦で被験の候補者になった咲人(山下智久)は、検査を受ける。咲人は条件を満たすが、蜂須賀(石丸幹二)は結論を先延ばしに。柳川(窪田正孝)と檜山(工藤阿須加)は、咲人が手術を受けるかもしれないと知り、心配する。そんな中、梨央(谷村美月)が咲人を訪ねてきた。柳川らは、障害を知りながらまた咲人とデートしたいという梨央の真意が分からない。梨央は人混みが苦手な咲人を別荘に招待する。
第4話 2015年5月1日「手術失敗!?あなたの為に起きて…奇跡」
「お利口」になりたい一心で手術を受けた咲人(山下智久)だが、術後1週間が経過しても変化が現れない。遥香(栗山千明)は、けなげに待ち続ける咲人の姿に心が痛む。一方、柳川(窪田正孝)や檜山(工藤阿須加)は、戻ってきた咲人の以前と変わらない様子に安心する。知能とともに運動能力も向上すると聞いた咲人は、草野球の試合でホームランを打って、野球を教えてくれた父・久人(いしだ壱成)の期待に応えることを夢見る。
第5話 2015年5月8日「輝く世界の果てに待つ愛奪われたキス」
手術の効果で知能と心が急速に成長し始めた咲人(山下智久)は遥香(栗山千明)への思いを募らせる。柳川(窪田正孝)や檜山(工藤阿須加)は、咲人の見違えるような変化に驚く。さらに、蜂須賀(石丸幹二)から車を贈られた咲人は、自動車教習所にも通い始める。梨央(谷村美月)は、遥香との初ドライブを楽しみにする咲人の姿に胸を痛める。一方、遥香は咲人の恋心が以前のように無邪気なものでないことに気付き、困惑する。
第6話 2015年5月15日「孤独が天才を連れてくる…蓋された心」
咲人(山下智久)は、ある出来事から心にふたをして理性で行動をすることを学ぶ。遥香(栗山千明)と蜂須賀(石丸幹二)は大きな成長を遂げた咲人に目を見張る。咲人は、母親の窓花(草刈民代)に手術の成功を報告して喜ばせたいと言い、遥香から住所を聞き出す。しかし、咲人が一人で窓花に会いに行ったと聞いた竹部(萩原聖人)は表情を曇らせる。遥香が慌てて窓花の家に駆け付けると、そこには取り乱した窓花だけがいた。
第7話 2015年5月22日「壊れる絆…全てを失っても愛に生きる」
咲人(山下智久)に会うため、妹の花蓮(飯豊まりえ)が訪ねてきた。昔、花蓮にばかにされたことを忘れていない咲人は、懐かしがる彼女を冷たく突き放す。遥香(栗山千明)は、純粋な心を失ってしまったそんな咲人の変貌に心が痛む。また、咲人は母親の窓花(草刈民代)と竹部(萩原聖人)の関係を誤解して、恩人の竹部との関係までもぎくしゃくしていた。一方、梨央(谷村美月)は、自分の病気の新薬に関する衝撃的事実を突き付けられる。
第8話 2015年5月29日「最終章!儚い夢の終焉と最後の希望!」
咲人(山下智久)は、遥香(栗山千明)と一緒に暮らし始める。一方、梨央(谷村美月)は病の進行により、1日の内で数時間しか起きていられない状態に陥っていた。遥香は、母親に愛されたいという咲人の願いを果たそうと、再び窓花(草刈民代)の家を訪ねる。そんな中、アルジャーノンに異変が。全ての数値が低下し、脳細胞が著しく減少し始めたのだ。研究所に戻った咲人は、蜂須賀(石丸幹二)らと薬の改良に取り掛かる。
第9話 2015年6月5日「終幕…対等のトモダチとの永遠の別れ」
服用した薬「ALG」の副作用の恐れを知った咲人(山下智久)は、効力の退行を防ぐために、蜂須賀(石丸幹二)と共にその改良に取り掛かる。2人が出した結論に遥香(栗山千明)ら研究員たちは驚きを隠せない。一方、檜山(工藤阿須加)と鹿内(勝矢)が、ドリームフラワーサービス内でけんかをしている姿を目撃した竹部(萩原聖人)は激怒。その夜、竹部はなぜこの会社を始めることにしたのかを柳川(窪田正孝)らに明かし…。
最終話 2015年6月12日「奇跡のラスト〜私から僕への遺言」
咲人(山下智久)は、自分が開発した薬を梨央(谷村美月)に注入する手術を医師に提案する。遥香(栗山千明)は、自分のことを後回しにして梨央の治療に全ての時間を捧げる咲人の行動を受け入れることができない。そんな中、窓花(草刈民代)が咲人を訪ねてきた。一方、蜂須賀(石丸幹二)は、研究資金を流用した詐欺罪で河口(中原丈雄)に告訴される。手術が迫る中、咲人は自分が元に戻った後のことを考えて、準備を進める。
各話視聴率
番組公式サイト
(アルジャーノンに花束を - Wikipedia)
2002年版
小説版をもとにしたテレビドラマが関西テレビで製作され、2002年10月8日から12月17日までフジテレビ系の「火曜22時枠」で放送された。全11回、最高視聴率14.5%(初回)。平均視聴率11.1%。
この作品では、主人公チャーリー・ゴードンは藤島ハルと名前を変え、舞台も日本に変更され、「知的障害者への差別によるいじめが強く描写されている」「主人公が恋する先生にも恋人がいる」など、一部変更されている。また結末も原作より大きく変更されている。
脚本の岡田惠和、音楽の寺嶋民哉など、スタッフ、キャストにドラマ『イグアナの娘』のメンバーが集結している。
日本国外に著作権があったため、ドラマ化をするにあたり交渉に3年かかった。
キャスト
()は原作での該当人物
藤島ハル(チャーリイ・ゴードン) - ユースケ・サンタマリア
遠矢エリナ(アリス・キニアン) - 菅野美穂
高岡晴彦 - 吉沢悠
桜井恭子(アーサー・ドナー) - 中島知子(オセロ)
小林留美子 - 石橋けい
蓮見冬美(ノーマ・ゴードン) - 山口あゆみ
原田文彦 - 井澤健
柳元啓輔 - 岡本竜汰
建部真一郎(ジェイ・ストラウス博士) - 益岡徹
徳永篤(バート・セルドン) - 田口浩正
田代ミキ - 榎本加奈子
蓮見佐智代(ローズ・ゴードン) - いしだあゆみ
スタッフ
脚本 - 岡田惠和
演出 - 新城毅彦(現:5年D組)、塚本連平
音楽 - 寺嶋民哉
主題歌 - ジェニファー・ウォーンズ「ソング・オブ・バーナデット」(BMG FUNHOUSE)
挿入歌 - ラブハンドルズ「スピード」(Sony Records)
企画・プロデュース - 安藤和久
プロデュース - 東城祐司(MMJ)、伊藤達哉(MMJ)
2006年版
2006年、韓国放送公社(KBS)で『おはよう、神様!』(アンニョンハセヨ ハヌニム)のタイトルで2002年版のドラマがリメイクされている。主人公の名は2002年版のドラマと同じ「ハル」であるが、パン屋に勤務しているのではなく養護学校にいることや、女詐欺師が登場するなど日本版とは違う設定になっている。出演はユ・ゴン、キム・オクビン、イ・ジョンヒョクなど。
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