飲み屋の並ぶ片隅にある古い食堂。夜の十二時から朝の七時頃まで、こわもてのマスター(小林薫)が包丁を握り、「豚汁定食」のほかは、材料 さえあれば、何でも作ってくれる。常連客は長年ゲイバーで働いている小寿々(綾田俊樹)や、ストリッパーのマリリン(安藤玉恵)ら。夜毎、 常連客が語り合う。
ある日のこと、ヤクザ者の竜(松重豊)が、手下のゲン(山中祟)と連れ立って店にやってきた。「エスカルゴ」「燕の巣のスープ」、難癖をつ けるゲンの言動に店が一触即発になった時、マスターが作った「赤いウィンナー」を食べて感動した竜は、以来、時々店に顔を出すようになっ た。客たちの内で竜が特に親しかったのは、大の卵焼き好きの小寿々。一つの皿を仲良く分け合う二人だったが、「赤いウィンナー」には、それぞれ忘れられない思い出が詰まっていて...。
第ニ話「猫まんま」
店じまいしかけた朝六時半頃、一人の女・みゆき(田畑智子)が食堂にやってきた。みゆきの注文にこたえ、好物の「猫まんま」を作るマスター(小林薫)。話をきくと、みゆきは売れない演歌歌手で、仕事がなく、歌いたいあまり朝までカラオケボックスにいたという。
常連客に作詞家の先生(田口トモロヲ)がいたことを思い出したマスターは、店に彼女のポスターを貼り、行きがかり上、そこでコンサートまで開くことになった。自分の歌を歌ったみゆきは、客たちの拍手と歓声に包まれる。そして、その場で作詞家にプレゼントされた歌「まよい猫」が、思いがけずヒットし始め...。
第三話「お茶漬け」
食堂に集う三十女のミキ(須藤理彩)、ルミ(小林麻子)、カナ(吉本菜穂子)。注文するのは、それぞれ「うめ」「たらこ」「しゃけ」と決まっていて、マスター(小林薫)はひそかに「お茶漬けシスターズ」と命名している。
お茶漬けを食べながら、男の話でいつも盛り上がる彼女たちだが、憧れは「純愛」による結婚。ある時、ルミが九州の実家に帰ってしまう。さらに十歳年上の男性との見合い話もあるらしい。「裏切り行為」と憤るカナ。二人に減ったお茶漬けシスターズだが、そんな中、うめ茶のミキの元カレとしゃけ茶のカナがつき合い始め、女の友情にひびが入る。
第四話「ポテトサラダ」
深夜の食堂でマスター(小林薫)が最初に作るのは、ポテトサラダとマカロニサラダ。近頃たまに来るようになった男(風間トオル)がいつも注文するのもポテトサラダだった。店で食事をしていた若者・田中(田中聡元)は、男が伝説のカリスマAV男優・エレクト大木だと知り、その場で弟子入りを志願。
困った表情の大木だったが、若者の一途さに押し切られる形で師弟の関係になった。ある夜、デビューを明日に控えた田中のもとに電話が。田舎の母親が倒れたのだ。軽い脳梗塞ということで気楽にかまえていた田中に大木は激怒。そこには彼なりの深い理由があった。
第五話「バターライス」
三つ星や五つ星には縁のない深夜食堂。常連客の小道(宇野祥平)が、本当においしいものを食べさせようと、マスター(小林薫)のところに料理評論家の戸山(岩松了)を連れて来てしまう。グルメの知識をひけらかす戸山のせいで、店は嫌なムードに。
そこにやって来たのが、今や絶滅寸前の流しの歌手・ゴロー(あがた森魚)。週一回やって来る彼は、いつものバターライスを食べ、『函館の女』を熱唱する。戸山はその時から毎週やってきてバターライスを注文するのだが、今度はゴローの方が来なくなった。
第六話「カツ丼」
顔を腫らし、マスター(小林薫)の店にやってきたカッちゃん(音尾琢真)はボクサー。勝った日に食べるのは「カツ丼」と決めているが、ボクシングだけではやっていけず、他の仕事をしながら練習にあけくれている。ある時カッちゃんは常連客の一人、アケミ(霧島れいか)と出会う。近所のスナックで働くアケミは夫を亡くしていて、今は小学生の娘・マユ(桑島真里乃)と二人暮らし。マユにも慕われ、カッちゃんはアケミに恋心を募らしていた。
そんなカッちゃんに、勝てば次はタイトルマッチというビッグな試合が飛び込んできた。勝ち目なしという厳しい下馬評にも関わらず、カッちゃんは仕事を辞め、ボクシングに専念する。そして「勝ったらアケミさんにプロポーズ」をしようと考えていた。ようやく掴んだタイトルへの挑戦権...運命のゴングが鳴る。
第七話「タマゴサンド」
ある早い朝、タレントを目指しているリサ(村川絵梨)は、マスター(小林薫)の店で、新聞配達を続けながら大学に通う苦学生・中島(田中圭)と出会い、タマゴサンドを分け合う。中島は暗いうちから新聞配達の準備をし、後片付けをしてから大学の講義に参加、睡魔と闘いながら勉学に励むとすぐに夕刊の配達が待っている、という厳しい生活を送っている。
そんな中島が新聞を配る時間に合わせて、店に通うようになったリサだが、やがて彼女の仕事が軌道に乗り始め...若い二人の恋の行方は?
第八話「ソース焼きそば」
深夜食堂に元アイドルの芸能人・風見倫子(YOU)がやって来た。ソース焼きそばに目玉焼きをのせたものを食べて帰ったと聞き、かつて倫子のファンクラブに入っていたという客たちは盛り上がる。それからひと月ほど経った頃、再び同じものを注文した倫子は、マスター(小林薫)に「子供の頃、よく食べてたから」と打ち明ける。
そんな彼女は今度、映画の主演をつとめることになっていた。その映画の主人公の境遇と自分自身の境遇にはどこか重なるところがあると言うが。
第九話「アジの開き」
マスター(小林薫)のもとに、朝の六時を回った頃、二日続けて朝ごはんを食べに来た老婦人がいる。名前は八千代(りりィ)、好きなものはアジの開き。
店の常連客の一人、ストリッパーのマリリン(安藤玉恵)は、巡業先から帰ってきていたが、顔を合わすうちに八千代と意気投合、「マリリンちゃんの踊りが見たい」という八千代の一言で深夜のクラブにまで一緒に行くことに。
マリリンの手を離れ、ひとりで踊り始める八千代。
八千代とは一体何者?同じく常連客の一人、忠さん(不破万作)は、どこかで見た顔、と思うが・・・。
第十話「ラーメン」
いつもは兄貴分の竜(松重豊)といっしょに店に来ていたゲン(山中崇)。その夜、一人で現れたゲンはマスター(小林薫)にラーメンを注文する。帰り際、ゲンがマスターに見せた不安気な笑顔。
ゲンは敵対するヤクザの若頭を刺し、姿を消した。以前、暴力団同士の抗争で竜を守れなかったことを気に病んでいたのだ。警察からもヤクザからも追われることになったゲンだが、そんな中、小学生の男の子・健太(中村咲哉)が、この店に来れば父親に会えると思ってやってきた。
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タグ:深夜食堂