2011年02月25日

悪党〜重犯罪捜査班 第6話

「刑事を続ける理由…愛する人へ」

 横浜市内の街角のゴミ捨て場で、チンピラ風の男の無残な刺殺体が見つかった。深夜に拷問された上、見せしめのようにゴミ捨て場に遺棄されていたことから、富樫正義(高橋克典)らは、暴力団の仕業だと推測。そこに、遅れてやってきた飯沼玲子(内山理名)は、被害者の男の顔を見てゾッとする。殺されていた男は、以前、玲子の同棲相手である西村和也(敦士)を拉致した手荒な連中の一人だったのだ。しかも、和也が今日の早朝、ひどくうろたえた様子で帰ってきたことを思い出した玲子は、慌てて自宅へと戻る。

 まもなく、殺されていたのは、黒紅コーポレーションの社員・平林邦夫と判明。黒紅コーポレーションは、表向きは医薬品、医療機器の卸会社だったが、暴力団も手を焼くほど非情な組織で、覚醒剤の密売に関わっている新興勢力だった。黒紅コーポレーションに乗り込んだ里中啓一郎(小泉孝太郎)は、代表の酒井伸一郎(風間トオル)と対面する。酒井は右手が義手で、拳銃の不法所持と密売で5年ほど服役していた過去を持つ人物だった。里中に「富樫さんはお元気ですか?」と尋ねる酒井。そして「いまは清く正しく生きています」と言い、殺された男に心当たりはないと言い切る。

 その後、里中は県警警務部長の前島隆造(村上弘明)から、12年前に酒井の右腕を奪ったのは富樫だと聞かされる。当時係長だった石黒孝雄(梅沢富美男)と共に拳銃の密売組織を追っていた富樫は、その組織を率いる酒井から家族に危害を加えると脅されるが、脅しに屈しなかった。すると酒井は、本当に富樫の妻・紀子(森脇英理子)を襲わせたのだ。前島曰く、そのときに富樫の中で凶暴な野獣が目覚め……富樫は酒井に発砲した。石黒が止めようと飛びかかったため、銃弾は急所を外れ、酒井の右腕に着弾したのだ。

 石黒が、罪を軽減する代わりに富樫の発砲はなかったことにするという取引を酒井としたため、そのような記録は残されていなかった。「いずれにせよ、黒紅コーポレーションに関わると、横浜港町署や富樫くんの古傷が痛むことになるよ」と忠告する前島。そして、「私を信じて忠誠心を見せなさい」という前島に、里中は考えた末、「お見せすることはできません」と答える。

 里中から12年前のことについて質問を受けた石黒は、富樫を呼び出すと、「奥さん、目覚める可能性はないのか?お姑さんや娘さんに本当のことを話してもいいんじゃないか」と切り出す。それに対し、「目を覚ます可能性が少しでもあればそうしています」と答える富樫。12年前、傷ついた紀子から「刑事を続けてください」と言われた富樫は、紀子の手を握り返すこともできず、病室を出て行く。その足で酒井への復讐に向かったのだが、その間に紀子は屋上から身を投げてしまった…。それから12年間、紀子は目を覚ますことなく植物状態で入院していたのだ。

 酒井を張り込む富樫のもとに、病院から紀子の様態が急変したとの連絡が入る。急いで病室へと向かった富樫が紀子の手を握ると、意識不明のはずの紀子が、その手をかすかに握り返してきた。富樫の問いかけに反応はないものの、紀子の意思を受け取った富樫は、担当医を待つことなく病室を出て、捜査へと戻る。

 黒紅コーポレーションの前へと戻った富樫の前に里中が現れた。いまのあなたを一人きりで酒井のもとに向かわせるわけには行かないという里中。そこに石黒からすぐに戻るよう連絡が入る。しかし、里中は必ず連絡をするようにと言って富樫をその場に残し、自分一人で署へと戻る。さらに、柴田安春(鈴木浩介)や山下学(平山浩行)、津上譲司(八神蓮)も招集されるが、玲子だけ連絡がつかなくなった。

その頃、玲子は自宅にいた。やはり和也は黒紅コーポレーションから覚せい剤を盗み出し、追われる身になっていたのだ。そんな和也に船のチケットと金を渡し、後は自分が何とかするから逃げるようにと指示する玲子。そして、和也から覚せい剤を受け取り、酒井たちのもとへと走る。

 一方、柴田の携帯には前島から、「黒紅コーポレーションが関西系暴力団と取引をするところに、村雨組を乗り込ませろ」という連絡が入る。即答できない柴田に、恫喝とも言える命令を下す前島。柴田は仕方なく、村雨組に連絡を入れる。

 酒井の写真を手に、聞き込みを続ける富樫のもとに玲子から連絡が入った。「刑事辞めます。これから自分の男が盗んだ覚せい剤を返しに行きます。死んでも後悔しません」と言って電話を切る玲子。急いで署に戻った富樫は事情を説明し、玲子を見つけ出すための協力を仰ぐ。それを聞いた山下が、柴田が何か知っているはずだと言い出した。それに対し、とぼける柴田だったが、富樫に問い詰められ、取引場所を白状する。同じ車で取引場所へと向かう富樫と里中。そこへ、紀子が息を引き取ったという連絡が入った。

 その頃、取引場所へと到着した玲子の前に、酒井と部下たちが現れた。覚せい剤を酒井に渡し、全部なかったことにして欲しいと言う玲子だったが、酒井に「半分しか入っていない。盗んだ奴はどこにいるか教えろ」と言われ、唖然とする。和也は玲子に嘘をついて残り半分を隠し持ったまま逃げたのだ。そこへ、里中たちが現れ、黒紅コーポレーションや関西系暴力団、村雨組の連中も取り押さえられた。

 玲子を人質にその場から逃げ出そうとする酒井の前に富樫が現れる。酒井に銃を向ける富樫。許しを乞う酒井を前に、富樫の脳裏には12年前の出来事が浮かぶ。銃を下ろす富樫に酒井がホッとした次の瞬間、その銃が酒井の太ももを撃ち抜いて…。自由になった玲子は、高飛びしようとしている和也のもとへ。残りの覚せい剤は後から気づいたという和也に銃口を向ける玲子。追いかけてきた富樫が和也を殴り倒すが、玲子はそれを制すると、富樫に銃を向ける。そして「二度と私の前に現れないで」と和也を逃がすのだった。「クビですね、私」という玲子に「いや、死ぬまで刑事続けろ」と言葉をかける富樫。

 深夜、前島から連絡を受けた石黒は、港町署を去る準備をしていた。覚せい剤の取引場所に里中たちを行かせたため、前島の逆鱗に触れ、他の警察署の資料課に左遷となったのだ。石黒は、今回の酒井に対する拳銃使用は、里中から人質の玲子が危険な状態にあったという証言があり、お咎めなしになると富樫に語る。「ミイラ取りがミイラか」とつぶやき、部屋を出ていく石黒。その頃、里中は自分の判断が正しかったのかと嘔吐するほど苦悩していた…。数時間後、遺体安置室でようやく紀子の遺体と対面する富樫だった…。


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