ところが、やがて直子が現れる時間が少なくなってきた。直子はもうすぐ平介に会えなくなるような予感に包まれる。そんなある日、平介は自分と同じ会社への就職が決まった梶川文也(田中圭)と再会。そのまま家へと連れて行き、藻奈美と3人で食事をする。楽しそうに会話をする藻奈美と文也。その様子を見ていた平介は何かを予感した。
しばらくして文也が帰った。その直後、藻奈美は平介に「連れて行ってほしいところがある」と切り出す。行き先は山下公園。それは平介と直子が初めてデートした、思い出の場所だった。どうやら直子が手紙を通じて藻奈美に頼んだらしい。翌日、平介と藻奈美は山下公園へ向かった。到着してしばらくすると、直子が現れた。
「平ちゃん、最後にここに連れてきてくれて、ありがとう」
それを最後に、直子の魂は消えた。その後、平介の前に直子が現れることは二度となかった。
8年後――。25歳になり、大学病院で助手をしながら脳医学の研究をしていた藻奈美が、結婚式の日を迎えることになった。式の直前、礼服を着た平介はバス運転手・梶川幸広(吹越満)の形見である懐中時計を手に、松野時計店へと駆け込む。平介は店主の松野(ミッキー・カーチス)に再び蓋が開かなくなった懐中時計を差し出し、修理を頼んだ。
「結婚式に持って出たいんです。新郎の父親の形見なもんで」
松野は蓋が開くようにして懐中時計を渡し、平介に言った。
「ふたりとも形見で出席ってわけだな」
ポカンとする平介に、松野は信じられない事実を告げた。それは先月のこと。藻奈美が直子の結婚指輪を材料にして自分の結婚指輪を作ってほしい、と松野に頼んだというのだ。
なぜ…? 平介は大急ぎでタクシーを飛ばし、結婚式場へと向かった。なぜ藻奈美は知っていたのだろう。直子が指輪をテディベアの中に隠したことは、平介と直子だけの秘密だった。それを藻奈美が知っているはずがない。まさか…まさか直子はまだ生きているのか。消えたように振舞っていただけなのか…!?
花嫁控え室に駆け込んだ平介は、疑惑を確信に変えた。「直子」――平介の口からその言葉が出ようとした瞬間、花嫁は遮った。
「お父さん、長い間、本当に長い間お世話になりました」
花嫁は涙をためて丁寧にお辞儀をした。平介は胸に込み上げてきたものをぐっと押さえ、花嫁の父としてうなずいた。そこへ、新郎の文也が入ってきた。平介は文也に申し出た。
「君を殴らせてくれ」
平介は思いっきり文也を殴った。
平介は自分の結婚指輪を外し、藻奈美とともにバージンロードを歩いた。藻奈美は平介の手を離れ、文也のもとへ…。その瞬間、平介は藻奈美にささやいた。
「藻奈美、幸せになれよ」
「うん」
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