平介はまともに食事をとらなくなり、直子はめったに口をきかなくなった。以前からは想像もできないほど離れてしまう2人の距離…。そんな折、平介は多恵子(本仮屋ユイカ)と偶然再会した。多恵子は新学期に入ってから藻奈美の元気がなくなってしまったことを心配し、平介がバス事故の日から一日も結婚指輪を外したことがないことを指摘した。「幸せですね。奥様。亡くなった後もこんなにご主人に愛されて」 その言葉は平介の心に引っかかった。直子は本当に幸せなのだろうか。むしろ逆ではないのか。僕さえいなければ、直子は自由に生きられるのだ。藻奈美として…。
いつしか平介は直子が家を出て行ってしまうのではないか、という不安に駆られるようになった。その矢先のこと。直子が突然姿を消した。直子はバス事故の直後に結婚指輪を隠し入れたテディベアを持って、学校の屋上にいた。嫌な予感に襲われ、慌てて直子のもとへ駆けつける平介。すると、直子が“2人だけの一生の秘密”を持つことを提案した。「あなたの妻として生きるの。心も身体も。もしも平ちゃんにその覚悟があるなら、私は…この身体をあなたに捧げる」「オレもそう思ってた」 直子の揺るがない決意を聞いた平介は、直子の提案を受け入れた。しかし、いざとなると手が動かなくなった。「やめよう」――平介は自ら制した。
夏が過ぎた。ある秋の日、平介は札幌に住む沢田美香子(朝加真由美)から連絡をもらった。彼女の甥で、亡くなったバス運転手・梶川幸広(吹越満)の息子・根岸文也(田中圭)の就職のことで、上京しているというのだ。美香子の願いで、平介は彼女と会った。美香子は本当のことを話さなければならないと言った。真実は衝撃的だった。文也は梶川の本当の息子ではなかった。札幌でホステスをしていた梶川の前妻・典子が、ほかの男との間に作った子どもだったのだ。文也が8歳のとき、そのことに気づいた梶川は「俺は父親のフリはできない」と書き残し、家を出たそうだ。典子の死後は美香子が文也を引き取って育てた。しかし、文也を大学に行かせられるほど、暮らしぶりはラクではなかった。そんなとき、大学進学の費用を援助すると申し出たのが梶川だった――。
翌日、平介は自分と同じ会社に入社することになった文也と再会した。梶川についての真実を知った文也は、自分に仕送りさえしなければバス事故も起きなかったと、自らの存在を責めていた。そんな文也に平介は、梶川が“愛する者にとっての幸せな道”を選んでやればよかったと、文也の前から去ってしまったことを後悔していたことを告げた。愛する者にとっての幸せな道――その言葉は平介自身の心にも響いていた。僕は今までどれだけ直子を苦しめ続けたのだろう。直子にとっての幸せは何なのだろう…。
帰宅した平介は直子に声を掛けた。「藻奈美…長い間、苦しめて悪かった」――平介が自分を初めて藻奈美と呼んだことに、直子は凍りつき、やがて泣き崩れた。部屋でひとりになった直子は魂が抜けたように、ただぼんやりと結婚指輪を隠し入れたテディベアを見つめていた。
その翌朝、予想もしなかった異変が起きた。目の前で起こっている現実に、平介は息を飲んだ。藻奈美の身体に藻奈美の魂が戻ってきたのだ――!
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