そんな中、直樹は恋人の麻美(香椎由宇)から、ソウル支社への転勤を打診されたと聞かされる。迷う麻美に、直樹は自分の不安を隠し、一度韓国に行ってみてから決断したらどうかと提案し、2人で韓国に行くことに・・・。
直樹はパスポートを申請するために戸籍抄本を取り寄せるが、そこで衝撃的な事実を知ってしまう・・・。
直樹の戸籍抄本の父母の欄には今まで両親だと思っていた及川正道・佐和子の名前はなく、「山本憲人」「山本美代子」と記載され、直樹のところには【養子】と書かれていた。自分が正道と佐和子の実子ではなかったこと知りショックを受ける直樹。「山本」というのは誰なのか・・・以前、死刑囚の深堀から「山本にそっくりだな」と言われたことが直樹の頭をよぎる。深堀が何かを知っていると感じた直樹は、翌朝深堀の房へ向かう。深堀は直樹が“山本憲人”という人物の息子であることを知ると激しく動揺し、直樹に襲い掛かかり直樹を殺そうとする。
深堀の態度から山本と何かあったのでは・・・と感じた直樹は歴代の刑務官の名を調べるがその中に「山本憲人」という名前はない・・・。直樹は、深堀の犯罪歴に関する資料を調べ始める。
深堀は、14年前の1996年仮釈放中に町で肩が触れ合ったことをきっかけに、次々と3人の男を刺殺して死刑判決を受けていた。さらに、その事件より12年前の1984年、深堀はもう一つ「鶯谷事件」と呼ばれる殺人事件にも関わっていたことがわかる。
そしてその「鴬谷事件」の主犯の欄には「山本憲人・・・死刑。1992年、死刑執行」という文字が・・・。まさか自分の父親が死刑囚だったとは・・・。直樹はただ愕然とする・・・。
“鴬谷事件”とは、26年前、東京下町の運送会社の社長と社員3名の計4人が殺害された事件だった。山本憲人と深堀圭造もその会社の従業員だったが事件の数日前に解雇されていた。犯行の動機は、同社事務員の吉川美代子を巡る三角関係のもつれで、日頃、恋人の美代子から『社長にセクハラを受け、交際を強要されている』と相談を受けていた山本は、事件当夜、残業中に社長に言い寄られていると連絡を受け、社長の殺害を決意。たまたま遊びに来ていた深堀に協力を頼んで会社に乗り込み、用意した包丁で社長と社員二人を刺殺。リストラされて社長を恨んでいた深堀も、社員1人を殺害した。公判では、痴情のもつれによる計画的犯行で、無関係の社員3人も巻き添えに殺害したと認定され求刑通り、主犯の山本に死刑、共犯の深堀に懲役12年の実刑判決が下っていた。直樹の父は死刑囚、とっくに死刑執行されていたのだった。
その夜、麻美とソウル支社への転勤の話になるが直樹はそれどころではなく、「麻美が決めればいいと思う」と言い残し帰ってしまう。残された麻美は直樹の気持ちがわからなくなり、涙する。酔っぱらった直樹は街で人とぶつかり、「俺は人殺しの息子だ」と言い放ったことで喧嘩に・・・。その頃、直樹の部屋から戸籍抄本を見つけた父の正道と母の佐和子も直樹の帰りを待っていた。ボロボロになって帰ってきた直樹に、正道と佐和子は実の息子だと思っていると想いを告げるが、直樹はどうして今まで本当のことを言ってくれなかったのか・・・と両親を責めてしまう。
直樹は翌日、深堀の元妻・和子(岡本玲)のところを訪ねる。山本のことをもっと知りたいと思ったのだ。和子は、山本君が人を殺すとは思えなかったのに・・・と直樹に打ち明ける。本当に父は主犯だったのか、直樹の中に1つの疑問が生まれた。
その夜、直樹はイビキをかいてよく眠る深堀を見つめながら父のことを思っていた・・・すると、世古が「すごいよな〜。6人も人を殺しておいてぐっすり眠れるんだから・・・」と直樹に話しかける。世古は鴬谷事件で1人、出所後3人を殺害した罪で死刑囚となったはずだが、6人殺したとはどういうことか・・・。深堀は6人殺したと自慢していたのだと世古は言う。
すべての真実を知るのは深堀ただ1人だと考えた直樹は、深堀に向かい合う決心をする。
「鴬谷事件」の主犯は本当に父・山本憲人だったのか?詰め寄る直樹に“お前の父親は大バカ者”だと深堀は言い、そんなに知りたきゃ教えてやるよと、“鴬谷事件”の真実を話し始める・・・。
事件当夜、残業中に社長に言い寄られ、さらに山本の子供を妊娠したことを知られたことで命の危険を感じた美代子からの電話を受けた山本の様子をみた深堀は、解雇された恨みもあり、社長の殺害を決意。山本の家の包丁を持ち出し、社員3人を刺殺。
その最中、社長に殺されそうになった深堀を助けようと、山本が社長を刺殺したというのがこの事件の真相だと深堀は語る。
本当は、3人を殺害した主犯は深堀で、山本は1人殺害したのだった。
なぜ、山本は深堀の罪をかぶったのか。子供の頃、川でおぼれているところを助けてもらった山本は深堀に恩を感じており、さらにこの深堀の行動のおかげで美代子とお腹の子供、つまりは直樹の命が救われたことに恩を感じていた。山本は、3つの命をお前に救ってもらって感謝していると深堀に告げたという。自分が主犯ということにして死刑を受け入れるからおまえは生きろ!と深堀に口裏を合わせるように言ったのは山本だった。
そして、山本には死刑判決が下った。実刑判決となった深堀は出所したが、その後、肩がぶつかったという理由で衝動的に3人を殺害。結局は死刑囚となったのだった。“俺の代わりに死刑囚になった山本はバカだが、せっかく出所したのに死刑囚になった俺は山本以上のバカだけどな。だが、まだまだ面白おかしく続けて生きてやるー”と深堀は高笑いをする。
その夜、帰ってきた直樹に正道と佐和子は山本からの手紙を渡す。直樹が真実を知る時がきたら、見せてほしいと託された手紙だった。その手紙には、生まれながら死刑囚の息子という十字架を背負わせてしまったことへのお詫びと、自分の人生は素晴らしいものだったが、只一つ悔むべきは、人の命を奪ってしまったこと。どんな理由があっても、人が人の命を奪うことは許されない。だから自らの命をもって、その罪を償うのだと書かれていた。
山本の死刑に立ち会った正道は、山本は本当に立派な男だったと直樹に告げる。
翌日、直樹は山本が過ごした房へ向かう。するとそこは満の房と同じだった。直樹は満に自分が殺人者の息子だったことを話す。そして、自分のせいで事件がおこってしまったことに傷つき、自分は生まれてこなければよかったんだと涙をこぼす。
満は直樹の肩を抱き言う。「どんなつらいことがあっても、お前は死なないんだぞ」と直樹をいたわる。
2人の心が通ったように見えた瞬間だった。
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