2010年10月30日

クローンベイビー 第5話

ヒロの口から明かされた、“クローンベイビー”の真実――。しかし、生まれも育ちも異なる自分たちが、同じ遺伝子を持つ間柄などと信じることのできない正宗は、「誰がそんなファンタジーを信じるんだよ」と一蹴。不安がる加奈子に対し、「俺がクローンなら、お前だってクローンのはずだろう?大体なんでクローン同士で見た目がバラバラなんだよ」と言い捨て、数馬が入院する病院へと向かう。しかし、その胸中には、ある別の想いが渦巻いていた…。

 時を同じくして悟志もまた、謎の男によって“クローンベイビー”である事実を突きつけられていた。しかし、野球人生に未練のある悟志は、男の話を信じることができないものの、もしどこかに自分のクローンがいれば腕を治せるのではないかという思いが頭をよぎり、ひそかな希望を抱くようになる。

警察の追っ手からなんとか逃げ切った豪太は、胸に輝く*型のネックレスに思いを蘇らせていた。かつて、幼馴染のヒロとは、よくヒーローごっこをして遊んだ仲だった。赤いマントを翻し、ヒロをいじめっ子たちから守って「ヒーローはオレだ!」と得意げだった、幼き頃の自分…。豪太は“あの頃の自分”を胸にしまうと、街の雑踏の中へと消えていった。

 後日、豪太のもとに“新たな指令”が届く。豪太に殺人を命じる紳士の正体は、なんと研究者・葉月だった!葉月の研究所にある病室で隔離され苦しんでいるのは、クローンたちが『覚醒』したときに脳裏をよぎる、あの包帯を巻かれた少女だ。葉月は、難病を抱えた自分の娘・葉月澪の命を救うため、新たな臓器を求めて豪太に殺人を指示していたのだ…。そんな葉月から『小島竜平』というターゲットの情報を受け取った豪太は、再びナイフを手に飛び出していく。豪太は、 “任務をすべて果たしたら、自分の父親になってくれる”と約束した紳士の言葉を素直に信じて、凶行に及ぶのだった。紳士の告げるターゲットを殺しても、不思議と罪悪感はなかった。しかし、豪太は今回のターゲットである『小島竜平』の行方を、なかなか掴むことができない。

 紳士に心から陶酔し、さらに殺人を重ねようとする豪太の前に、再びヒロが現れた。ヒロはクレバーで憧れの存在だった豪太が、ボロボロに利用されて自滅に向かう姿を見て辛くなっていた。「今までに、内臓を全部抜き取られた死体を処理しなかったか?」。ヒロの中には確信があった。あの男――ビルの屋上から命を絶ったはずの正宗が生きているのは、恐らく“他のクローンの臓器を使って蘇生させたから”に違いない。しかし、豪太は心配するヒロの助言に一切耳を貸さず、ひたすら小島竜平を探し続けた。

 結局、豪太は『小島竜平』を探し出すことができなかった。豪太は、紳士に正直に報告した。ところが相手は、「君の任務を別の人物に移行することになった」と言う。そして、その人物とは「もう一人のアスタリスクだ」とも…。それがヒロのことを指すのだと直感した豪太は、自分の存在を脅かすことになるであろうヒロに対し、強い殺意を抱いて――。

“自分もクローンベイビーの一人だ”というヒロの発言に半信半疑ながらも、自分の腕にあったはずのアザが消えたことに対する不安が拭えない正宗は、再び運び込まれた病院へと向かう。そして、遺体保管所へ辿り着いた正宗は、以前見かけた“自分のミサンガを手にはめていた死体”を必死に探すのだが…やはり見つからなかった。しかし、ミサンガは思いもよらぬ形で正宗のもとへと戻ってきた。なんと、父・数馬の着替えの中に、ミサンガが紛れ込んでいたというのだ。数馬からミサンガを受け取った正宗は安堵し、ミサンガが見つかったことを報告するため、マリカのもとへと向かうのだった。

そんな頃、ヒロと豪太は旧児童保護施設で対峙していた。

 豪太は、激しく後悔していた。今までは、クローンに架せられた『排他の摂理』によって、いわば本能のまま殺人を繰り返してきた。しかし、椿栄太やネットカフェで毒物を混入して殺害した客は、クローンではなかった。不測の殺人だった。もう、殺人から足を洗っても、穢れを知らぬ頃の無邪気な自分には戻れない。

 豪太には、父親や仲間と酒を飲みたいという夢があった。確かに紳士は言っていた、「君が生まれた年のワインを用意している。息子として迎えたときに祝杯をあげるのを楽しみにしている」と…。そのためには、どうしてもやり遂げなければならないのだ。たとえ、ヒロを殺めることになってしまっても――。

 「まだ、逃げ道はあるかもしれない」と諭すヒロの言い分など、聞く気はなかった。揉み合いの末、豪太の腹部にナイフが突き刺さった。「オレは、ヒーローじゃなかったんだな…」

 まだ息のある豪太を抱きかかえ、ヒロは言った。「オレにとってのヒーローは……お前だけだった」――。
 
豪太はその言葉に微笑みながら、ゆっくりと目を閉じた――

マリカの自宅で正宗は、「これからとち狂った話をするけど…」と前提して、ある話を始める。自分が試験管で産まれた“クローンベイビー”であるということ。クローンには*型の痣があるということ。クローンベイビーたちは、『磁石の法則』によって、どんなに離れた場所にいても、まるで赤い糸に導かれているかのように引かれ合い、『排他の摂理』によって殺し合う運命にあるということ――。

 正宗は、マリカに話を聞いてもらい「こんなことあるわけない、これは100パーセント妄想だ」と確信するはずだった。でも、逆だった。「どうしてこんなに――お前を殺したくなるんだろう」。

 正宗は、自分がクローンであるということを確信した。そしてマリカ自身も…正宗と同じアザを持つ自分が、彼ら“クローンベイビー”と何らかの関係があるということに、気付き始めていた……。

同じ遺伝子を持つ者は二人と存在することはできない。
 残酷な命を懸けたイス取りゲームは、まだ始まったばかり――


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