そんななか平介と直子は、事故の日に直子と藻奈美が向かうはずだった長野を訪れることに。直子の姉・容子(村岡希美)から亡き母の七回忌の連絡があったからだ。直子は複雑な心境に陥るが、“藻奈美”として父・三郎(河原さぶ)と容子に会いに行くことを決意する。道中、平介と直子はバスの事故現場に降り立った。その瞬間、直子の脳裏にまざまざと事故の瞬間の記憶が蘇る。何が何でも藻奈美を守らなければ――その一心で、娘をかばったあの日。しかし、藻奈美の魂はどこかへ消え、残された藻奈美の体には自分の魂が宿ってしまった。藻奈美はどこに行ったのか…。直子は事故現場に来れば藻奈美に会えるかもしれないと期待していたが、それは叶わなかった。
やがて2人は実家に到着した。そこで、幼いころから大好物だった三郎の手打ちそばを食べた直子は、いたたまれない気持ちに…。その夜、三郎が平介に直子の遺骨について尋ねてきた。遺骨はまだ家に置いてある、と告げる平介。すると三郎から、平介が思いも寄らなかった言葉が飛び出した。
「それはいかんな。それじゃ直子も安心して眠れんよ。君だって、そばにあれば直子のことが気になるだろう。忘れることだ」
驚きのあまり、わずかな言葉しか発することのできない平介。しかも、そんな三郎の言葉を直子がこっそり聞いていた。家族にとって自分はもう死んだ人間…。自分は幽霊みたいに漂っているしかない…。直子は身を切るような現実を痛感した。そんな直子を目の当たりにし、平介は強く思った。自分だけが直子の本当の家族なのだ、この世で僕たちは2人ぼっちだ…と。
数日後、バス会社と遺族の間で賠償金の最終交渉が行われた。梶川の過失は認められたが、賠償金額は遺族1人につき3600万円と決まった。これで交渉は終わったのだ。平介は虚しさに包まれた。「それが私の命の値段か」――示談金の値段を聞いた直子はふっとため息をついた。その直後、直子が再び口を開いた。
「買っちゃおうか。直子さんのお墓」
その時、平介の中に言いしれぬ悲しみと拒絶感が押し寄せた。直子の体の一部を目の前から消し去ることがこんなに苦しいとは…。平介は初めて、直子を本当に失ってしまう気がした。
ひと月も経たないうちに、平介と直子は墓を手に入れ、直子の遺骨を納めた。その帰り道、直子は何かが吹っ切れたようだった。そして、平介に切り出した。
「これから、平ちゃんのこと“お父さん”って呼ぶことにする。私、藻奈美として生きることにする」
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