第8話「正義の翼」
大内機械工業に、同社の敷地に爆弾を仕掛けた、爆発されたくなければ20億円を用意しろ、という脅迫電話が入った。犯人の予告通り“デモンストレーション”として備品倉庫が爆破され、清掃係の女性が重傷を負う。
犯人は「正義の名のもとに大内機械工業に罰を与える」といった声明文をマスコミに送付。同社の大内社長(藤堂新二)はかなりのワンマンと評判なだけに敵も多い。それにしても「正義」とは何なのか?右京(水谷豊)は首をかしげる。
犯人は大内のもとに送り付けたパソコンにメールを送る形で、20億円の受け渡しなどを指示。しかも内蔵カメラで大内らの行動を監視しているらしい。さらに犯人は5億円をすべてダイヤに換えるよう要求。米沢(六角精児)からその情報を聞いた右京は、ダイヤの受け渡し方法について、ある可能性を思いつく。
犯人は大内に、パソコンとダイヤを持ってとある駅前へ行けと指示。刑事たちが見守る中、やがて届いた犯人からの指示は、警察の人間を入れることなく、一人で近くのビルの屋上へ行け、というもの。伊丹(川原和久)らも手が出せず、ビルへ入る大内を見送るしかない。右京と薫は隣のビルへと駆け込む。
屋上へ到着した大内だが、そこには数羽の伝書鳩が。犯人は伝書鳩につけられた袋にダイヤを詰め込み、空へ放つよう指示してきた。驚きながらもやむなく指示に従う大内。刑事たちも放たれた鳩をただ見送るしかなかった。
飛び立つ鳩をビデオカメラに収めた右京と薫は、映像を伝書鳩の愛好家に見てもらい、その鳩が「中野五三八号」という種類であることを突き止める。
「中野五三八号」系の鳩を飼っているという大学の名誉教授・脇田(大滝秀治)から話を聞くが、今となっては誰に雛を分けたかも覚えていないという。
右京はデモンストレーションで爆破された部屋が、当時ミーティングが行われていた会議室と離れていたことに疑問を抱く。犯人は誰も傷つかない部屋を選んで爆破したのではないか、ということは内部の犯行か?ミーティングを招集したれい子(小西美帆)に話を聞くが、もちろん鳩を飼っている知り合いなどいないと否定されて…。
亡くなった大内機械工業の先代社長・大内直輔は地雷処理ロボットの開発に取り組んでおり、れい子らはその遺志を継いで研究を続けていたらしい。しかし、下請け会社の社長の話によると、二代目の大内になってそのプロジェクトも中止が決定したとか。
「中野五三八号」が実は軍鳩で、育てたのは当時少年だった大内直輔だったことがわかる。さらに特命係に犯人に奪われたはずのダイヤがそっくり戻ってきた。犯人の目的とは…。
薫はれい子にダイヤが戻ってきたことを告げて反応をうかがう。そのころ右京は脇田教授と会い、「中野五三八号」が直輔と脇田が2人で育てた鳩だったことを明らかにする。同様しながらも事件との関わりを否定する脇田。れい子が開発していた地雷処理ロボット「S82」を支援していたはずだが、それでも脇田は何も語ろうとはせず…。
犯人はやはりれい子だった。会社から奪った20億円で中止になる研究を続けようとしたのだ。そのために鳩を貸して欲しいと脇田教授に協力を依頼したが、脇田は拒否。仕方なく脇田の留守中に鳩を持ち出し、まんまと計画を成功させたが、脇田は奪ったダイヤを特命係に送り返していた。
右京らに証拠を突きつけられ犯行を認めたれい子だが、地雷をなくしたいと続けてきた研究が中止になるのは許せない、自分は間違っていないと言い放つ。が、彼女の計画のおかげで一人の女性が重傷を負ったのも事実。右京は「地雷を作った人と変わらない」と諭す。
「S82」は昭和82年、つまり平成19年のことだという脇田。軍国少年だった直輔と脇田だが、戦争で心に深い傷を負った直輔は地雷処理ロボットをひたすら研究し続けていたという。直輔にとって昭和は、戦後は終わっていなかったのだ。右京と薫はそんな脇田の話を噛みしめながら、遠くなった昭和に思いをはせるのだった。
相棒 TOPへ 各話視聴率へ
タグ:相棒 Season6