第7話「空中の楼閣」
美和子(鈴木砂羽)の初めての単行本を担当していた編集者の勝村(大鷹明良)が何者かに殺害された。勝村の指先が赤く汚れているが、美和子によると原稿の書き込みに赤ペンのインクが付いたのでは、という。
勝村の同僚よると、勝村は人気作家の庄司タケル(村上淳)ともめていたという。庄司は勝村の胸ぐらをつかみ、「殺すぞ」とまで言ったとか。庄司の担当編集者の日高(吉見一豊)は、勝村は自分が認めない相手には誰彼かまわず食ってかかっていたという。庄司とのケンカも勝村の悪態が原因ではないか。日高は庄司が怒るのも無理はないと庇う。
庄司が作家になる前、キャバクラのボーイをしていたころに傷害で逮捕されていたことがわかった。右京(水谷豊)と薫(寺脇康文)は庄司から話を聞くことに。
高層マンションの最上階に住み、世の中を見下すのはいいもんだ、とうそぶく庄司。事件当夜は恋人と六本木で飲んでいたというが、あっさりとアリバイは崩れてしまう。
勝村の死で美和子の初の単行本も中止に。これで有名なエリセ化粧品が工場から有害物質を捨てていた、というルポも日の目を見なくなってしまう。「花の里」で右京らが残念がっていると、たまき(高樹沙耶)がタケルの「ビター・ラブ」を読んだと本を取り出した。目を引く装丁だが、美和子の単行本も同じ装丁家が担当する予定だったという。
その装丁家なら、勝村と庄司が揉めていた原因を知っているかもしれない。右京らは装丁家の安藤(菊池健一郎)から話を聞く。作品の冒頭部分を取り上げながら美和子の作品を褒める安藤。その安藤によると、庄司は「ビター・ラブ」の映画化の邪魔をする勝村に怒りを露にしていたという。なぜ勝村は庄司の小説の映画化を妨害したのだろうか?
「ビター・ラブ」の主人公が使っていたエリセ化粧品のマスカラが大ヒット商品になっていることがわかった。おかげでエリセ化粧品は映画のスポンサーとなったが、勝村が準備していた美和子の本には、エリセ化粧品の安全管理体制に疑問を投げ掛ける内容がある。そこで庄司は勝村に発刊を思いとどまるよう忠告したという。
勝村殺害の動機も十分、さらに事件当夜、勝村と言い争っているところを目撃されていた庄司は容疑者として拘束される。庄司は犯行を否定、さらに美和子の作品を「誰も読みやしない」と非難する。怒った薫は勝村のデスクに残っていたという美和子の原稿を突きつけ、読んでみろと迫るが、そのとき右京が自分が読んだ原稿とは違うことに気がつく。
美和子に確かめると原稿は7回書き直していたが、装丁家の安藤が暗誦した冒頭部分が書かれたのは、勝村が殺される直前に書かれた原稿だけ。ということは、安藤は勝村が殺される直前に勝村と会い、美和子の原稿を目にしていたことになる。
右京らの追及に安藤は犯行を自供。表紙のデザインを勝手に変えられるなど、いつまでも自分を認めてくれない勝村に怒りを感じての犯行だった。
「ビター・ラブ」映画化発表会見の当日、右京らは庄司に美和子の原稿を読ませる。たちまち顔色を変える庄司。実は庄司は少年時代、エリセ化粧品が垂れ流していた有害物質に苦しめられていた。
怒りも露に「映画化は白紙」と席を立つ庄司をテレビで見守った右京と薫。その心はささやかな喜びに満たされていた。
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