第9話 「冤罪」
「私…、人を殺しました」。ある晩、緑川警察署に、内縁関係の青木由紀男(平井賢治)を自宅アパートで殺害したと、篠宮ゆかり(青山知可子)が出頭してくる。凶器の灰皿を持ったまま2時間もさまよい歩いた末、逃げ切れないとあきらめ、近くにあった緑川署に自首したのだという。原因は別れ話のもつれ。捜査課は、当直で聴取を担当した安城雄二警部補(中村育二)を中心に、正当防衛の可能性も視野に入れ捜査を進めると決定する。その直後、安城はゆかりの弁護士と名乗る室園悦子(一色彩子)の訪問を受ける。送検も起訴も済んでいないのに、手際が良すぎる。不審を抱いた杉下右京(水谷豊)は、悦子の事務所に向かう。
悦子は数日前、青木との金銭トラブルをゆかりから相談されていた。しかし、悦子は刑事事件が専門。そこで、民事専門の弁護士を紹介し、帰したという。ゆかりは、その時の名刺を出頭時に所持していたらしく、すぐに悦子に弁護を頼んだというわけだ。
悦子立会いの下、ゆかりと接見した右京は、凶器の灰皿はヘビースモーカーだった青木の持ち物だと聞かされる。だが、アパートを訪れた右京と亀山薫(寺脇康文)は、10年も住んでいたというのに、畳に焦げ跡が一つもないことを不思議に思う。几帳面とは言いがたいほど部屋は散らかり、何かをこぼしたような染みまで残っているのに…。「妙ですね」。染みを見つめる右京がつぶやく。染み跡が、畳の縁できれいに途切れているのだ。そして隣の畳の反対側に、同様の染みが。2人は畳を持ち上げ回転してみる。染みはぴったりつながった。と同時に、畳の下から札入れが見つかる。青木の財布は押収済み。ではこの札入れは…?
その日、ゆかりの兄・彬の逮捕歴が明らかになる。罪状はゆかりと同じく殺人。彬は20年前、金子祐介殺害を自白。しかし、その後“冤(えん)罪”を主張し、上告中に拘置所で病死していた。自白調書を読み終えた右京は、取調官の署名に目を留める。「安城雄二」。ゆかりの担当捜査官だ。
安城の調べでは、犯人が兄妹ということを除き、2つの事件に関わった人物に接点はないという。自身が担当になったのも運命の皮肉だと。しかし、右京たちは違和感をぬぐい切れない。そしてその夜、違和感を一層強める情報が、奥寺美和子(鈴木砂羽)からもたらされる。彬を起訴したのは、当時、検事だった悦子だと!
「皮肉」。悦子は安城と同じ言葉を口にする。ゆかりは過去の事実を知らずに、自分に弁護を依頼していると続ける悦子。だが、右京たちはこの言葉を信じない。身内を起訴した検事の顔を、誰が忘れるというのか。
右京たちが畳の下から発見した札入れは鑑定に掛けられ、結果、青木と 20年前の被害者・金子の指紋が検出される。これにより、青木が20年前の真犯人という可能性が浮上。獄中死した彬は、やはり無実だったのか? そうとも知らず、兄の仇とも言える男と内縁関係を続けていたゆかり。もしも彼女がその事実を知ったとしたら!?
財布には他に、身元不明の指紋があった。すぐに安城の指紋と照会させる右京。ところが明らかになった指紋の主は、安城ではなく悦子であった…!
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