2010年10月08日

クローンベイビー 第1話

<プロローグ>
 白衣を身にまとった研究員の目の前に、整然と並べられた11個の試験管がある。
 その試験管の中には、特殊な培養液に浸けられた生命の種。研究員は震える手を抑えながら、その試験管のひとつひとつに触れた。禁忌を犯した自らを慰めるように、そして「これから始まる命の戦いに負けないように」という思いを込めて……。
 研究員はおもむろに携帯電話のディスプレイを開いた。そこには、生まれたばかりの愛娘が微笑んでいた。その写真を指でなぞった。 「こうするしかなかったんだ……」
 思わず唇からこぼれた声を、誰も聞き取ることはなかった。

 青柳正宗(市川知宏)は、ビルの屋上に立っていた。*型の印象的なアザがある左腕に、かつての恋人・葛飾マリカ(滝裕可里)から貰った赤いミサンガを巻いて…。

 「これで全部終わり……」 正宗は声を振り絞った。傍から見れば何の不自由も感じてないように映る、ごくふつうの青年。受験に失敗して浪人生活を送る正宗だったが、応援してくれる親の存在があるだけでも有り難いともいえる。そんな正宗が突発的に自殺を図ろうとしたのには理由があった。正宗の脳裏に、数日前の出来事がフラッシュバックした――。

 椿栄太(桜田通)とは、中学時代の同級生だった。何が不満なのだろう。正宗は、初めて会ったその日から、栄太に目を付けられていた。正宗は図体こそ大きいが、自分に自信がなく内気なタイプだ。栄太にとって、正宗をイジメのターゲットにすることに深い理由などなかった。「気に食わないから」と、栄太はつるんでいた仲間を集め、時間を見つけては、正宗に拳をふるった。正宗は、そんな栄太から少しでも離れようと努力した。実際、正宗は栄太とは違う高校に進学して、シェルターにでも逃げ込んだかのように胸を撫で下ろした。

 ところが、平穏な日々は、長くは続かなかった。正宗の高校に、栄太が制服を着替えて、奇襲にやって来た。トイレに逃げ込んだ正宗だったが、栄太の暴力は収まらない。床に這いつくばりながら、正宗の中に初めて『死』の影がよぎった。

 浪人生活に入っても、正宗の前に現れ続ける栄太。栄太はお札を取り出し、「気絶ゲーム」と称して、正宗を気絶させるまで殴り続けるゲームを仲間内で起こした。正宗は薄れゆく意識の中で、栄太に鬼の姿を見た。

 あと一歩。あと一歩で、楽になれる。正宗は覚悟を決めた。

 そんな正宗の前へどこからともなく現れたのは、謎の青年・菊池ヒロ(松坂桃李)だった。ヒロは正宗の自殺を止めるどころか、「君が死んでくれて助かる」と言い放ち、「さあ、早く」とまるで自殺を催促しているかのようだった。「このイス取りゲームには、イスは一つしか用意されていない」――。ヒロは意味深な言葉を口にして、あろうことか正宗をビルの屋上から突き落とした。その瞬間、正宗には、“車イスに座った全身包帯だらけの少女”の姿が見えた。どこか見覚えのあるようなその姿を誰かに重ねていると…やがて、視界が黒く途切れた。

 目を覚ました正宗は、病院の一室にいた。それも、屋上から飛び降りたとは思えないほどの軽傷、左腕にギプスをはめた程度の状態で……。周りには、正宗の父である青柳数馬(松重豊)、そして妹の加奈子(未来穂香)が付き添っていた。状況が全く理解できない正宗だったが、あの屋上での出来事が、決して夢ではないことだけは理解していた。そして、その左腕からは、巻いてあったはずのミサンガが忽然と消えていた――。

 そんな中、世間では7月7日生まれの19歳の若者が次々と殺され、その身体から臓器の一部が抜かれるという猟奇的な殺人事件、通称『七夕殺人』が起こっていた。捜査を進める新宿副都心署の刑事・葛飾省吾(牧田哲也)と若林春喜(駿河太郎)は、鑑識からDNA鑑定の結果を知らされるが、「犯人と被害者のDNAが同じ」という事実に驚きを隠せない。
 事件は、一向に解決の糸口が見えなかった。

 無事退院し、日常の生活に戻った正宗を待ち受けていたのは、自殺を図った最大の要因――栄太からの執拗なイジメだった。決して逃れることが出来ない現実に、正宗は再び絶望の日々を過ごすしかなかった。またいつものごとく、栄太のおもちゃにされる正宗――。そんなボロボロになった正宗の前に再び現れたのは、ビルの屋上で正宗を突き落とした青年・ヒロだった。ヒロはいじめに苦しむ正宗に、「オレが代わってやろうか?」と提案する。自暴自棄に陥っていた正宗は、その奇妙な提案にすがってしまうのだった…。

 その日を境に、正宗の生活が微妙に狂い始める。ヒロは、本来であれば“正宗がいるべき場所”に次々と姿を現すようになった。正宗が通う予備校では、「テストを代わりに受けておいた」という。そして、栄太に呼び出された場所に向かうと、正宗の代わりにヒロが暴行を受けていた。本当に『自分の身代わり』になってくれるのか――?

 マリカとの“思い出の場所”であるコーヒーショップで、以前と変わらぬ様子の彼女と親しげに話していたのは…またしてもヒロだった。大切な存在であるマリカだけは渡せないとムキになる正宗だったが、ヒロの提案に乗ってしまったのは正宗自身だ。「代わってくれといったのはお前だろ!」と考えの甘さを指摘するヒロを前に、口をつむぐことしかできない正宗だった。
 

 ふと正宗は、自分が投身自殺を図った日のことを思い起こす。「目覚めたあの病院で、きっと何かがあったんだ」――。確信にも似た思いを抱え、病院へと向かった正宗は、廊下でストレッチャーに乗せられ運ばれていく遺体とすれ違った。ふとした弾みにダラリとシーツからこぼれた遺体の左腕…。そこには、正宗がマリカから貰ったはずの赤いミサンガが巻かれ、*型の印象的なアザがあって――!?

 動揺を隠せないまま帰宅した正宗が扉を開けると、ダイニングから数馬と加奈子の笑い声が聞こえてきた。そして、自分のイスに…ヒロが座っていた。本来ならば正宗のいるべき居場所に、次から次へと現れるヒロ。まるで自分の人生を乗っ取るかのような行動をとる彼に憤りを覚えた正宗は、加奈子ら家族の制止もきかず、ヒロに苛立ちをぶつけて…。


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