死体の発見者は、介護士の新井道子(真行寺君枝)で、彼女の証言によると、死体を発見する直前、戸棚を漁っていた女がいて、道子の姿を見ると逃げ去ったという。
やがてノブの娘で唯一の遺産相続者でもある川村恵子(林寛子)が逮捕され、鶴丸あや検事(名取裕子)のもとに送られてくる。恵子は、事件当日ノブのもとに行ったことは認めたが、自分が訪ねた時はノブはすでに死んでいたと主張する。母の遺体を見て動転し、とっさに自分が疑われると判断して現場から逃げたと恵子は無実を訴える。
あやは、恵子の供述を疑いながらも、彼女の犯行とはどうしても思えない。決して好きになれるタイプの人間ではないが、正直すぎて嘘をつくように見えないからだ。
そこで、あやは介護を担当していた道子の調査をはじめる。誰に聞いても道子の評判はよく、普通ならいやがる介護を進んで行なっているという。しかし、あやはあまりに出来すぎた道子の人間像に疑いをもち、裏に何かあると感じる。
その直感は正しかった。道子が介護を担当している老人たちから不正に金を巻き上げていたことが判明したのだ。それは、悪徳商法の蒲団を売りつけたり、借り受けた銀行通帳から横領したりと巧妙な手口のものだった。
さらに、あやは執務室で道子と直接対決に持ち込み、ノブを殺した犯人が道子ではないかとの推理を本人にぶつけた。その答えは正しいものだった。しかし、その動機は複雑なものだった。
道子はかつて自分の母に愛されなかったことから、人間不信に陥っていていたが、そのストレスを解消できるのが介護活動だった。というのも、老人達から優しさや褒め言葉を貰うことができたからだ。しかし、本心から介護に従事したいわけはない、やがて介護は新たなストレスを生み、悪徳商法や横領などの犯罪へと走る。道子は「笑顔の代償」と言ってのけた。
そんな道子の抱える心の闇を見抜いたのが、ノブという女性だった。道子がノブに全幅の信頼を寄せるまでに時間はかからなかった。ノブは道子に全ての財産を託すとまで語っていた。しかし、道子はノブが実の娘に財産を渡すことに心変わりしたのではないかと疑ってしまう。その疑いは殺意へと変貌し、殺人を犯してしまったのだった。
心のすれ違いが生んだ哀しい殺人であった。
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