「超ウケるんですけど〜」
昨日まで渋谷でカリスマ店員をしていた嘉納ハルコ(23)の目の前には、外国人たちが座っていた。高校教師となることが夢だったのに、まさか外国人相手の日本語教師とは。顔が引きつるハルコ。
「やる気がないなら帰っていいぞ」とベテラン教師・鷹栖(42)に言われるも、引き下がれない理由がハルコにはあった。鷹栖から教科書を奪い今日教えるページを開く。『助数詞』だった。
「小学生レベルじゃない。日本語教えるなんて簡単よ」と教壇に立つハルコ。
「モノの数え方について質問ある人?先生が何でも答えてあげるよ」
ロシア人のクールビューティー・ダイアナが手を挙げた。ハルコが指すとダイアナが座ったまま答えようとした。
立って発言させるためハルコは言った。
「立って言って」 「た」 「…?」
ダイアナは『た』と言う様に言われたと思ったのだった。
波乱満載日本語バトルの幕開けだった。
「ストローは一個です」と答えるダイアナに、細くて長いものは『一本』と教えるハルコ。
すると、食いしん坊の中国人・王が 「蛇も一本ですか?」 …生物か無生物かで数え方が違うと教えるハルコ。
動物はその大きさでも数え方が違う。蛇は『一匹』、象は『一頭』。するとダイアナが意気揚々と知識を披露する。
「ブラジャーも数え方が違います。Aとか、Bとか」 「……それはサイズですから」
黒板に 『鮪』と書いて『マグロ』 と教えると、中国人のお嬢様・金麗が
「違う!中国でその字は『チョウザメ』よ!」 聞けば 『鮭』も『フグ』 のことらしい。
ハルコがうろたえているとアメリカ人・ボブが 「ラーメン茹でる時の網編みカップは何て名前か?」 と聞く。
答えられないハルコ。お構いなしに次々とカルトな質問が。
「醤油を入れる四角くて仕切りのあるお皿の名前は?」 「持つところが一つの大きい鍋は何あるか?」……
バカにしているのかとハルコは怒った。しかし生徒たちにとっては、それは生きるために必要な質問だったのだ。
生活費のためラーメン屋で働くボブが、麺を茹でる網=『てぼ』が分からず店主に怒鳴られるのを目撃するハルコ。
意を決したハルコは翌日、生徒たちを教室から連れ出した。それは教育機関の常識をぶち壊す前代未聞の行動だった。
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