2010年03月26日

連続ドラマ小説 木下部長とボク 第12話(最終話)

僕元は最近、みんな仲良く仕事も頑張っている木下部を誇らしげに感じていた…もちろん木下部長を除いて。僕元は、仕事中にホットプレートで特大のお好み焼きを焼く木下部長に言葉を失う。そこに次々と帰ってくる木下部の部員たち。石川らが仕事の中間報告を木下部長にしようとした時、事件は起こった。

「俺、もう、会社辞めてええかなぁ?」と木下部長が突然言い出したのだ。木下部は騒然となる。理由を聞かれた木下部長は「俺、店長になりたいねん」と答えた。先週、木下部長はパン屋へ行き、「店長、店長ー」と女性店員に色々相談されていた店長を見て、店長になりたいと思うようになったという。理解しようにも呆気にとられる木下部長発言。引き止める僕元たち。しかしお構いなく木下部長は、ぼーっと思い出していた。割烹かれんのママが楽しそうに電話相手の「店長」と話す場面を。

その時、お清が木下部長のデスクの引き出しをおもむろに開けた。そこにはかわいい蝶ネクタイとネームプレートが付いた店長の制服が。働くお店はもう決まっているのかと尋ねると、慌てた木下部長は制服を抱きかかえて逃げ出してしまう。残された木下部員たちは呆然と立ち尽くす。

一方専務、本部長、人事部長は木下部長が辞める話を社長に報告。すると社長は、この際まとめて辞めてもらう人がいると言ってリストを机に出す。それを見て凍りつく専務ら。社長は専務らが丸々通信買収騒動の裏取引をしていた実態を、なんと木下部長から聞いて知っていたという。専務と本部長は、木下部長が自主的に退社すると聞いて嬉しくなり、ついつい木下部長に秘密を喋ってしまったのだ。結局、専務らを含む反乱分子が会社を辞める事になり、丸々通信に平和が訪れる。この木下部長の突然の辞職により、反乱分子が"あの掃除機"もびっくりのパワーで一掃された事は、後に「木下のサイクロン式辞職」と呼ばれることになる。

 翌朝木下部は、主要ポストの人間が大量解雇となった混乱で部屋が取れず、誰かが屋上に行っているかもしれないとの連絡が僕元に入る。木下部長の姿が脳裏をよぎった木下部の部員たちは、木下部長が出社している事を期待して屋上へと走って行く。だが屋上はがらんとして、木下部長の姿はなかった。木下部員らは懐かしむように、木下部長がこれまで起こしたいろんな伝説、小さな奇跡の数々を振り返る。石川は、木下部長はいつものように気が変わって戻ってくるだろうと言って励ました。皆はそれまで頑張ろうと呟きながら屋上を後にし、それぞれが難題を抱えるクライアント先へと向かう。

 哲、常磐、神奈川は御園ビールから、明日までにポスターのコピーとデザインをやり直してほしいと無理な注文を受ける。神奈川は御園ビールの社員に抗議しようとするが、何も言えずにため息をつくのみ。会社へすごすごと戻る3人。哲と常磐は御園ビールの理不尽な要求に愚痴をこぼす。その時神奈川が立ち止まり、「木下さんだったら、どうするかな…」とづぶやく。意を決して、御園ビール社員のもとへと踵を返した神奈川は「無理だって言ってくる」と言い、走り出した。次から仕事がこなくなる可能性が高いが、神奈川らの気分はすっきりしていた。

 大通り美術館の会議室に呼ばれた君島部長。担当者の白井から、丸々通信の手がけたオープニングキャンペーン効果もあり、のべ1万人という今月の集客目標を達成、大成功した事を感謝される君島部長たち。しかし、白井から来期のキャンペーンを再びコンペにすると告げられると君島部長は「では、来期は違う者に担当させます」と、君島部がコンペには参加しない事を白井に告げた。クライアントの事情を汲んでばかりだと大事なものを見失ってしまう…自分と、部下のモチベーションを大切にしたいという君島部長もまた、木下部長の生き方に強い影響を受けていた。その時、白井の秘書が会議室に入ってくる。秘書は、美術館の割引券をもらうため木下という男が訪ねて来ている事を伝える。それは間違いなく、木下幸之助だった。この報告に君島部長は思わず笑ってしまう。

 夜になり、お清、めるたん、ワトソンは釣り堀にいた。クライアントから退屈なデザインと罵倒されたやり直し指示に落ち込んでいた。3人は、こんな時木下部長だったらどんな奇跡を起こしてたんだろう、と話し出す。するとお清は、クライアントを釣り堀に呼び出そうと提案。木下部長のような奇跡が起きる事を想像する3人は、とたんに笑顔になる。
不手際の謝罪のためにクライアント回りをしていた石川と後藤。残り1社になるが、石川はそんなに頑張らずに明日にしようと提案。石川も木下部長の影響をしっかり受けていた。

 社長が割烹かれんでママとふたりで飲んでいると、僕元がやってくる。僕元は、木下部長がいるか気になって見に来たという。社長は帰ろうとする僕元を呼び止めて酒を勧めた。僕元は木下を部長にした理由を社長に尋ねる。社長は「ああいうやつがおるとほっとするやんか」と答えた。会社はいろんな人がいるからこそ、元気でいられるのだと…。木下部長のその後を社長に尋ねるかれんのママ。「知らん。そのうち連絡あるやろ。あのアホ」と、社長は酒を飲んだ。ミコシバは木下部長を探しに、いつもの銭湯を覗きに行く。が、木下部長の姿はない。ミコシバが落胆していると石川と後藤もやってくる。この後、常磐、哲、ワトソン、神奈川も銭湯に顔を出し、皆は楽しげに、一緒に湯船に浸かりだす。

 その頃、ジャズバーのカウンター席に座る君島部長の前には、木下幸之助がいた。バーテンダーの格好をして立っている木下部長。「何に、なさいますか」…ビールと注文をする君島部長を無視して、カクテルの作り方本を見ながら勝手にセックスオンザビーチを作り出す木下部長。「みんな、会いたがってるぞ」という君島部長に木下部長は「そのうち、嫌でもばったり会うやろ」と言った。そんなことより、木下部長には少し不満あったのだ。「おい、君島ぁ、いい加減“店長”って呼べや」…君島部長は冷静に答えた。
 「だってお前、バイトだろ?」

夜空に、ひとつ星が流れた。


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posted by Dhunting | Comment(0) | TrackBack(2) | 2010年冬ドラマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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Excerpt: 『さよなら奇跡の男伝説の最後は涙の別れ消えた部長』内容相変わらずの木下部であったが大事件が起きる。木下部長(板尾創路)が、、、“俺、会社辞めてもええかなあ?”驚く僕元(池田一真)石川(津田寛治)神奈川..
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