2010年03月19日

連続ドラマ小説 木下部長とボク 第11話

木下部長がかれんのママと添い寝をした翌日、君島部長は浮かない表情でデスクにいた。同じ頃、木下部に激震が走る。めるたんが、木下部長がクビになるという情報を入手。クビになる決定打は本部長を殴った事のようだが、何か別の思惑がありそうだと石川は皆に告げる。
役員室では専務と本部長、人事部長が密談していた。専務らは木下部長だけでなく、暴力沙汰を起こした部長を任命した社長も更迭しようと謀んでいた。

 割烹かれんで木下部長とママがモジモジしていると社長がやってくる。ママは様子がおかしい社長に、その理由を聞く。社長は、丸々通信が南グループに買収されそうだと涙ながらに明かす。その頃、とある飲食店の個室で君島部長は南グループ社長と会っていた。君島部長は世界的企業の南グループが、単なる一広告代理店の丸々通信を買収する理由を尋ねる。南社長は君島部長のヘッドハンティングに失敗したから会社ごと買ったと、冗談半分に答える。君島部長は買収を思い止まらせようとするが、南社長の意思は固かった。

 翌朝、本部長と人事部長は木下部長を今日付けで処分する事を社長に報告。本部長は社長自ら、社内テレビ放送での朝礼で発表して欲しいと説得する。木下部のテレビ画面には社長に続き木下部長が映し出され、木下部の面々は解雇の発表を覚悟して見つめていた。社長が木下部長の暴力沙汰の経緯を説明していると、木下部長は「悪いと思ってません」と発言。「大切なひとが侮辱されたり、弱いもんが苛められたりしたら、それは戦ってええんや思てます」と続ける。社長は木下部長を庇い、「悪い奴やない、反省しているから許して欲しい」と訴える。予想しなかった展開に慌てた本部長は、社内放送を中止してしまう。

 専務らは役員室に集まり、株主総会で社長と木下部長を処分する事を確認する。専務らは、南グループが丸々通信買収後、良いポストを用意してもらうことを条件に社長を更迭し社内の面倒な事態を整備しておくと南社長に約束していた。専務ら幹部3人ともメル友のめるたんは、木下部長の処分に会社の買収計画が絡んでいる情報を仕入れ、木下部の部員たちに報告。社長もろともの木下部長解雇は避けられない事態となった。

 僕元たちは途方に暮れた。いつの間にか、木下部長のダメっぷり、気ままっぷりが、部員たちにとってなくてはならない、安心感のある存在になっていたのだ。

 君島部長はこの危機的状況に、木下部長なら奇跡的な策を何か考えているだろうと相談するが、木下部長は「あ、そう」と無関心。それどころか「ちょっと付き合ってや」と君島部長を銭湯へ連れ出し、一緒に湯船に浸かる。君島部長は「がっかりしたよ」と帰っていく。

 一方木下部ではそれぞれが“こういう時、木下部長だったらどうするだろう”と考え始めていた。自宅でひとり物思いにふけっていた僕元は、ある“木下部長的”作戦を閃いた。

 翌日。君島部長は割烹かれんを訪ね、ママに知恵を借りようとする。「買収も、されたらされたで居心地いいかもよ?」と言うママ。「早く帰りたい〜」「このままどこかに行っちゃいたい〜」という心の声は君島部長にもあるのでは?と笑うママに、君島部長は心の奥を触られた感じになる。

 その頃、木下部長は土手にいた。目の前には木下部の面々。呼び出されたのだ。僕元からダンボールを渡される木下部長。「広告を、つくるんです」という僕元。言われるがまま土手の上まで連れて行かれた木下部長にめるたんが叫ぶ。「はい、滑り降りてきてください!」―――わけわからず滑る木下部長を、皆が夢中で、それぞれ思い思いのアングルでビデオで撮影して笑っている。ひとしきり滑った後、「次は銭湯」「その次は釣堀で」「その次は二丁目です」と撮影は夜まで続き…

 買収計画も大詰めとなった数日後、人気情報番組「スッキリ!!」に一本のビデオが投稿される。それは木下部全員で撮影した、「木下部長ビデオ」だった。その中身は…ものすごい形相で土手を滑る木下部長…ものすごい脱力した顔で浮かんでいる木下部長… そして酔ってものすごいディープキスをする木下部長だった。ビデオを見た司会の加藤らが唖然とする中、放送を見た視聴者から予想以上の反響が番組に寄せられ始める。

 一部始終をテレビで見ていた専務たち3人が愕然としているところへ、一本の電話が鳴る。同じくテレビを見ていた南グループ社長だった。電話で応対する本部長に南社長は「ああいう人が生き延びられる会社ってのは介入しない方がいいね」」と、買収をとりやめることにしたという。その心はあたかも“自然保護”なのだ、と。

 「今度は部員が奇跡を起こしたか…」と、君島部長はデスクでひとり笑っていた。この一件は、木下部長を見習って木下部員が起こした奇跡であり、木下部員の間では『木下ならどうする理論』と呼ばれ、その後も部員のピンチをちょくちょく救ってくれることになるのだった・・・。


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