そんな北のもとに、なんと裁判員裁判の呼び出し状が届いた。そして北は725号法廷「殺人」の裁判に出向く。傍聴席にいた山野と美和は、裁判員として現れた北を見て驚く。被告人・早川勝は図体の大きい強面の男だ。いかにも、という印象を受ける北だが「第一印象で判断するのはやめよう」と思い直す。
早川はかつて社会人ラグビーのスター選手だった。しかし練習中にチームメート井口のタックルを受けて負傷。選手生命を絶たれ、会社もリストラされてしまう。その後、再就職できずネットカフェ難民になった早川は井口への恨みを募らせ、帰宅途中の井口にタックルし、後頭部を強打させ死亡させたという。早川は弁解することもなく裁判官に「私を死刑にしてください!」と懇願し、法廷内の人々を驚かせる。弁護人は早川が殺意を認めているものの、気を失った井口を見てすぐに救急車を呼んでいることを指摘し、殺す意志はなく傷害致死罪が妥当と話す。殺人か傷害致死か。裁判員として判断を迫られた北は、傍聴席にいるときとの責任の重さを改めて感じていた。
評議室に集まった裁判員は若い女性、職人風の中年男性、定年を迎えた老人、中年主婦、インテリ風サラリーマン、そして北の6人。殺人ならば死刑か無期懲役または5年以上の有期懲役、傷害致死ならば3根に上の有期懲役になる。殺意の有無によって刑の重さがまるで違ってくる。ほかの裁判員たちは殺意は明確であり殺人罪だと言うが、北は「本当に殺意があったら凶器を使ってもいいはず」と考えていた。北は意を決して「決めるのはまだ早い」と発言し、結局結論は出ないまま終わる。
その後、北は待ち構えていた山野につかまり「判決は殺人か傷害致死か?」と迫られるが、守秘義務があるので教えることはできない。そんな北に美和は黙って殺人と傷害致死の定義を書いたメモを渡す。
そして公判二日目。法廷ではラグビー選手のタックルの威力についての証言などが行われ流れは完全に殺人罪に傾いていた。モヤモヤした思いを抱えながら、北もついに「殺人だと思う」と答え、裁判員全員の意見が一致した。
その夜、北のアパートを山野が訪ねてくる。山野は北が破り捨てた傍聴日記をテープで補修していた。山野はそれを北に渡し「傍聴マニアとしての経験を生かせ」と叱咤する。日記のページには美和からもしっかりしろ!とのメッセージが書かれていた…。北は気持ちを奮い立たせ、裁判の経緯を見直していく。やがて北はある疑問に突き当たった。
そして公判三日目。
北は勇気を奮って被告人にある質問をする。そしてその質問は、被告人が言おうとしなかった真実の扉を開くことになる――。
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