同じころ、秋津千里(小雪)は、能楽師の丹阿弥泰夫(加藤虎ノ介)と会っていた。そこで泰夫は、丹阿弥流宗家である両親をはじめとする、三親等の係累まで書き記した紙を千里に手渡し、色々な親類がいるが自分は次男坊で煩わしい付き合いは一切しない主義だ、といって彼女にプロポーズする。
昭和42年7月、近畿商事では、年に2度開催される経営全体会議が行われる。その席で壹岐たち業務本部は、重工業化に対応するために繊維部門のさらなる縮小を唱えた。だが、里井を中心とした反業務本部勢力は、繊維部門が社内一の売り上げを上げていることを理由にこの再縮小案に猛反発したため、会議は紛糾する。
その夜、社長の大門一三(原田芳雄)は、里井を連れて料亭を訪れる。そこで里井は、改めて壹岐の提案に反対した。すると大門は、何故もっと大きな立場に立って壹岐を使おうとしないのか、と里井に問いかける。それが近畿商事のナンバー2である里井の立場ではないか、というのだ。その言葉を受け止めた里井は、大門の方針に従うことを誓って頭を下げた。
そのころ、アメリカを始めとする各国政府は、国内産業保護の観点から外国資本の参入を事実上禁止してきた日本政府への批判を高め、中でも特に、自動車産業に対する資本の自由化を求めていた。資本の自由化が実現すれば、持ちこたえられるのはアイチ自動車と日新自動車だけで、近畿商事が輸出代理店となっている業界4位の千代田自動車などはアメリカのビッグ3、フォーク、ユナイテッドモーターズ、グレンスラーらに飲み込まれてしまう可能性が高かった。壹岐は、ビッグ3の上陸こそ、国際企業とのビジネスをつかむチャンスだと考え、兵頭信一良(竹野内豊)や海部要(梶原善)ら業務本部のスタッフに、アメリカ自動車業界に関する情報の収集を命じた。
一方、里井は、大学時代の同窓でもある千代田自動車の営業担当専務・村山(田村亮)に会う。そこで村山は、社運をかけた新車の開発を進めていること、万が一それが失敗に終わったときは、業界5位の富国自動車との合併を考えていることを里井に打ち明ける。
そんな折、壹岐の前に、航空機部時代の元部下で、第2次防FXをめぐる情報漏えい事件で会社を追われた小出宏(松重豊)が現れる。
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