「ピアノを弾く女からかかってきた電話の着信音は、何故指名手配中の逃亡犯の耳に聴こえなかったのか?」
警務課長の近藤(本田博太郎)でございます。またしても事件が起きてしまいました。河川敷でキャバクラに勤める越坂奈月さん(柳下季里)の絞殺体が発見されたのであります。被害者の唇に塗られたグロスには、指名手配中の男・梅野昭典(伊藤洋三郎)の指紋が…! 梅野は5年前に神戸で起きたサラ金襲撃事件の主犯でした。当時、強盗の片割れは逮捕されましたが、梅野は見張り役の車で逃走してしまったそうです。以来、2人の行方どころか、見張り役が誰だったのかも掴めないまま歳月が過ぎておりました。
そんな中、奈月さんの遺体をご覧になった池永副署長(船越英一郎)は、ある部分に引っかかられたご様子。実は奈月さん、右手の小指だけ付け爪が剥がれていたのであります。一度引っかかられた点は解明するまで食いつくスッポンのような副署長…。黙って見過ごすはずがございません。案の定、私のトイレタイムを見計らっては、こっそり捜査へと出掛けられることに…。副署長が向かった先は美容室でした。ふ、副署長、何を悠長に爪の手入れなど…。しかし、そこは呑気なフリをして抜け目のない副署長。その店は、ほかでもない奈月さんが通っていた美容室だったのです。副署長は爪の手入れと称して、店長のひろ子さん(比企理恵)から奈月さんが殺される直前にも来店していたとの情報をさりげなく仕入れておられました。
やがて、梅野には愛人が数人いたこと、そのひとりが京都市内のマンションに住む小学校の音楽教師・吉崎仁美(寺田千穂)だということが判明致しました。しかも彼女、通勤に不便であるにもかかわらず、5年前から住所が変わっていないというのです。となれば、梅野が仁美のマンションに現れる可能性もあります。野沢刑事課長(石丸謙二郎)はさっそく仁美さんのマンションを張り込むことを提案されました。ところが…。マンションの所在地をお聞きになった途端、なぜか野沢刑事課長の顔色が急に変わられたのです! 実は、野沢刑事課長は3年前から奥様と息子さんと別居。お二人は仁美さんの隣室に住んでらっしゃったのです。しかも、奥様には現在ほかに付き合っている男性がいらっしゃるとか…。偶然、奥様からその事実を聞いた副署長は複雑な思いに駆られたご様子。しかもタイミング悪く、野沢刑事課長は男性が奥様の部屋を訪れる現場を目撃されてしまった! 未だ離婚に同意していない野沢刑事課長は心をかき乱し、張り込みに集中できなくなってしまわれ…。
その夜、公園で梅野が刺殺されました! 現場には女性の足跡、梅野の携帯には仁美さんの小学校からの着信履歴が残されておりました。さらに、梅野が殺された時間帯に仁美さんが外出する姿が裏口の防犯カメラに映っていたのであります。しかし、その時間帯に監視を担当していた野沢刑事課長は、それを見逃していた…。人一倍仕事に対して厳しい野沢刑事課長はミスを取り戻そうと、任意同行した仁美さんを激しく追及されました。ところが、仁美さんはコンビニに出掛けただけだと言います。しかも、梅野が殺されたことを聞かされ、泣き崩れてしまった。その様子をご覧になった副署長は、仁美さんが犯人だとは思えなかったようです。
その矢先、副署長は梅野が携帯にかかってきた電話に一度も出ていないことに気づかれました。そして、彼の着信音が25歳以上の成人には聴こえづらいモスキート音に設定されていることを発見されたのです。さらに、着信履歴の発信元をお調べになられた副署長は、とうとう事件の真相に気づかれました!
「オレの我慢もここまでだ!」
ふ、副署長…いつものことながら、足が速すぎます。私がのらりくらりと署内を歩き回っている間に、副署長はすでに姿を消されておりました…。
副署長が向かったのは美容室。真相はこうでした。小指の付け爪を上手く付けられなかった奈月さんは美容室へ。そこで、梅野に「一緒に逃げたい」と迫るひろ子さんを目撃したのです。梅野は口封じのために奈月さんを絞殺しました。後日、ひろ子さんは足がつかないように客の携帯を使い、梅野に電話したといいます。しかし、梅野は出なかった…。不信感が募りながらも、ひろ子さんは用立てた逃走資金を渡すため、梅野と会いました。ところが、梅野は「ひとりで逃げる」と言い、誰かの連絡を待っていたのです。さらに不信感が大きくなったひろ子さんは、金を渡そうとしませんでした。そんな彼女に梅野はナイフをちらつかせ、金を要求。揉み合ううちにナイフが梅野に刺さってしまったのです。
実は、梅野は仁美さんと逃げようとしていたのです。仁美さんは梅野の指定通り、勤め先から携帯に連絡しましたが、梅野は出ませんでした。不安になった仁美さんは梅野が殺された深夜、再度連絡しようとして外出したそうです。しかし、梅野が連絡するよう指定した時間帯はとっくに過ぎていた。結局、仁美さんは連絡するのをやめたそうです。
男と女というものは複雑怪奇でございます。今回の事件のように哀しいかな、そう簡単にすべてが丸く収まるというわけにも参りません。副署長しかり、野沢刑事課長しかり…。私ですか? まぁ、私のことはよいではありませんか。
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