そんな中、気難しいことで知られる入居者・本村幸三(津川雅彦)は、オムツの着用を断固として拒否。それでも施設で推奨されているから、と彦一がオムツを履かせようと本村に近づくと、ステッキで脚を引っ掛けられてしまう。カッとなった彦一は掴みかかるが、本村はまったく動じない。それどころか、ユニフォームの下に隠していた刺青を見られてしまう。
若頭・鷹山源助(松平健)から、絶対に正体がバレないように、と念押しされていたのに、晶の息子・涼太(加藤清史郎)にも、本村にも刺青を見られてしまった彦一は、気が滅入る。
本村は、腕っ節が強い上に乱暴で過去には殴られたヘルパーもいるらしい――と噂を聞いた四方木りこ(黒木メイサ)は、鷹山三樹矢(薮宏太)、黒沢五郎(五十嵐隼士)、六車雅人(夕輝壽太)、二本橋賢吾(宇梶剛士)ら“任侠ヘルパー”に、そんなにやっかいな老人ならば、オムツを履かせたら手柄になるのでは、と話す。そして、早速、りこ、五郎、二本橋が本村の元へ向かうが、本村を説得することができない。
翌日、彦一は園崎から、本村の外出の付き添いを頼まれる。なんと、本村の指名だと言う。不審な顔を見せる彦一に本村は、刺青のことをちらつかせ、半ば強引に彦一を連れ出す。
そして、彦一を従え駅に来た本村は、ステッキをついて立ち上がると、車椅子を預けてこい、と彦一に命じる。不自由ながらも自分の足で歩きバスに乗り、さらに歩いてやってきたのは柔道場だった。そこに、寺内という人物を訪ねるが、寺内は体を壊していて道場には来ていないと言われる。寺内は、この10年間、本村が柔道大会シニアの部の決勝で負け続けてきた人物だが、今年の大会に名前がなかったため、消息が気になっていたのだ。本村は、そのまま寺内の自宅を訪ねることに。すると、出てきたのはホームヘルパーで、寺内は室内でベッドに横たわっていた。病気のため、寝たきりになっており、意思疎通もできなくなっていた。変わり果てたその姿に、大きなショックを受けた本村は、部屋を後にする。
施設に戻っても、元気がなく食事もとらない本村をヘルパーたちは心配するが、彦一は、興味がなさそうな態度をとる。そんな折、晴菜が車椅子から転げ床に座り込んでいる本村を見つける。お漏らしをしてしまった本村は雑巾を持ってくるよう頼むが、晴菜は自分がやるから、と声をかける。足も不自由だし、年なんだから、お漏らしは恥ずかしいことじゃない、という晴菜の、心からの言葉が本村に突き刺さる。そこへ、通りかかったりこがヘルプに入り、本村は部屋に帰って行く。その様子を、彦一が見守っていた。
その後、晶が秘書・日野弥生(中別府葵)、堀井皐月(安田美沙子)とともに現れ、暴力行為を行ってきた本村を退去させることにしたと報告する。それを批判する彦一に晶は、料金が安い施設が介護をするには、ヘルパーがボランティア精神で働くか、利用者が施設のレベルに合った介護を受け入れるかしかないと一蹴する。
後日、荷物の整理が済んだ本村は、部屋にやってきた彦一に、柔道関連のトロフィーや自分の写真が入ったダンボール箱を捨ててくれと頼む。そして、慣れておきたいから、と彦一にオムツを履くのに手を貸して欲しいと言う。オムツを手にした彦一は、それを床に叩きつけると、出ていってしまう。
いらついたまま、夕食の買い物に出た彦一は、その帰り道に数人の子どもにいじめられている涼太を目撃する。彦一は、しばらく様子を見ていたが、やがてズンズンと涼太に近づくと、怯む子どもたちには目もくれず、涼太の頭を引っぱたく。驚く涼太に、何でやり返さないんだ、と怒鳴る彦一。涼太は泣き出してしまうが、それを無視して彦一は立ち去ってしまう。
翌朝、彦一は本村を部屋から連れ出す。車椅子を押して近くの砂浜にやってくると、施設を出ていくなら遠慮はしない、と言って本村を砂の上に投げ飛ばす。そして、砂の上の本村を見下ろし、暴言を吐くと、立ち去ろうとする。すると、本村はゆっくりと立ち上がり、あの下手糞な投げをもう一度やってみろ、と挑発。向かってきた彦一を、鮮やかな一本背負いで投げ飛ばした。砂の上に体を起こした彦一に、お前では相手にならん、と言う本村。その表情には、笑顔と自信がこぼれていた。そんな本村に彦一は、その元気があれば、オムツはいらないだろう、と声をかける。
後日、別の施設に移った本村から、彦一にハガキが届いた。そこには、来年の柔道大会の優勝を狙いリハビリに励んでいると近況が書かれており、最後には、慣れるとオムツも悪くない、とあった。
そんな彦一の元に、緊張した顔の涼太が現れる。ジュースを買い、屋上に行くふたり。そこで彦一は、涼太に父親がいないことを知り、今度、ケンカの仕方を教えてやると言う。
ふたりが一緒にいるところ見た晶は、息子に近づかないでくれと怒りを露わにするが、彦一は涼太から来ているんだ、と言い放つ。そして、利用者に無理やりオムツを履かす晶のやり方を再び批判し、オムツを履いたら性格が丸くなるのでは、とからかうように言う――と、晶の平手が彦一の頬を打った。立ち去る晶を気にも留めず、彦一は歩き出し…。
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