そんな折、彦一は隼会若頭・鷹山組組長の鷹山源助(松平健)から呼び出される。鷹山が、死亡した8代目の告別式後に話があると言ったため、彦一は次期若頭に指名されるのでは、と内心期待する。
告別式後、迎えに来たバスに乗り込むと、そこには四方木りこ(黒木メイサ)、鷹山三樹矢(薮宏太)、黒沢五郎(五十嵐隼士)、六車雅人(夕輝壽太)、二本橋賢吾(宇梶剛士)ら、隼会の面々がいた。彦一と同様、幹部指名に期待する面々に、鷹山は「研修」を受けてもらうと切り出す。隼会と敵対する鷲津組のシマのど真ん中で「研修」をし、その働きぶりを見て幹部候補を決めるというのだ。
そんな中、バスは「タイヨウ」という老人介護施設に着いた。鷹山は困惑する面々に対して、ここでヘルパーとして働くように、と命令。事務室に通された彦一たちを、施設のオーナー・園崎康弘()とヘルパー・和泉零次(山本裕典)が迎えた。鷹山は園崎に、彦一たちを建設会社の各支店長だと説明、経験を積ませるために「タイヨウ」で研修させてほしいと頼んでいたのだ。
彦一たちは、ユニフォームに着替え、ヘルパー・美空晴菜(仲里依紗)らとともに老人たちの世話に当たるが、まるでやる気がない。
同じ頃、介護ビジネスで成功を収める「ハートフルバード」社長の羽鳥晶(夏川結衣)は、第一秘書の日野弥生(中別府葵)、第二秘書の堀井皐月(安田美沙子)を従え、分刻みのスケジュールをこなしていた。そのため、息子の涼太(加藤清史郎)の苦悩にも気付かないでいた。
一方、控え室で寝ていた彦一は、施設に入居する老婦人・倉田チヨ(池内淳子)に顔を撫でられた。チヨには認知症があり、彦一を息子と勘違いしたのだ。彦一がそんなチヨを冷たくあしらい部屋を出ようとすると、チヨは小遣いだと言って金を差し出す。彦一は、平然とそれを受け取った。
翌日、彦一はチヨの部屋を訪ねると、息子を装い金に困っているとウソをつく。それを聞いたチヨは、再び彦一に金を渡す。その後、彦一は積極的に老人たちに話しかけ、そこから得た個人情報をノートに書き込んでいく。後日、舎弟・七海和樹(向井理)に会った彦一は、そのうちにごっそりとカモを捕まえて組に復帰すると言って、ノートをちらつかせる。
その日の就業後、彦一はチヨから巻き上げた金で買った高級時計をして出かける準備をする。ところが、財布の中に金がない。再び、チヨを訪ね金を無心するが、チヨは手持ちがなく、明日、銀行で下ろしてくると言う。すると、彦一はチヨをコンビニに連れて行き、ATMで金を下ろしてこいと言う。ところが、残高不足で下ろすことができない。ショックを受けたチヨはその場で泣き崩れ、その後、彦一が目を離した隙に姿を消してしまう。
施設に戻った彦一は、零次に激怒されるが、まもなくチヨが保護されたとの連絡が入る。
チヨは晶が経営する高級老人ホーム「ハートフルバード」にいたが、チヨが暴れたために体を紐でくくられていた。園崎らとともにホームにやって来た彦一は、晶と対面するが“高齢者たちの救世主”と崇められながらも、身体拘束をいとわないその方針に反発を覚える。
後日、施設に戻ったチヨは落ち着きを取り戻し、彦一に花見に行こうと話しかける。しかし、彦一は冷たい態度で拒絶する。
その態度に心を痛めたのか、チヨは施設から姿を消してしまう。チヨが現れたのは、あのコンビニだった。店員が自分の金を盗ったとコンビニで訴えるが、あの夜にいた男性店員はおらず、チヨは仕方なく店を出る。肩を落とし歩くチヨ。と、通りかかった黒塗りの車がクラクションを鳴らし、運転手は暴言を吐いた。ムッとしたチヨは停まった車に歩み寄ると、車体を蹴飛ばす。それは、鷲津組のチンピラの車だった。
そこへ、チヨを探していた彦一とりこがやってくる。チンピラにすごまれているチヨを見た彦一は助けに行こうとするが、りこに止められる。揉め事になったら、自分たちの正体がバレるというのだ。それでも放っておけない彦一は、自分はチヨの世話をしているヘルパーだと割って入るが収まらない。彦一は、りこにチヨを託すと、チンピラたちを引き連れて海岸に走って行く。そこで、チンピラたちから殴る、蹴るの暴行を受ける。抵抗せず地面に倒れこんだ彦一を、さらにチンピラが殴ろうとしたとき、彦一を追ってきたチヨが、チンピラの背中を傘で叩きつけた。怒ったチンピラはチヨを突き飛ばし、倒れたチヨは意識を失ったのかグッタリしてしまう。それを見たチンピラは、慌ててその場を走り去る。彦一は、チヨの体を揺さぶり、必死で目を覚まさせようとする。と、チヨがパチリと目を開ける。意識を失ったふりをしていたのだ。
施設への連絡を済ませると、3人は桜のある土手へとやってくる。チヨが息子に桜を見せてやりたいと言っていたからだが、当然、桜の季節は過ぎていた。残念がるチヨに、彦一は背中に彫った桜の刺青を見せてやる。見事に咲いた背中の桜を見たチヨは、嬉しそうに微笑む。それを見た彦一も、思わず笑顔がこぼれる。
そんなやりとりを木陰から見ていた人物がいた――涼太だ。
数日後、施設にチヨの息子夫婦がやってきた。チヨを連れて田舎に行くことが決まったという。施設を出ることになったチヨに、彦一は忘れ物だと言ってカバンを渡す。傷だらけの顔の彦一を新人ヘルパーだと思うチヨは、ケンカはいけないと声をかける。その言葉に、彦一は小さく「はい」と答えた。
走る車の中で、カバンの中身を見るチヨ。そこには、数百万円はあろうかという、札束が入っていた。
その頃、施設の前に停まった高級車から晶が降り立った。晶と再び対峙した彦一は、晶の介護に対する姿勢に改めて不快感を覚える。晶が施設に入っていくのを見送ったとき、背後から涼太が現れる。涼太は彦一に、“ヤクザ”なのかと聞き、さらに刺青も見たと言う。そして、誰にも言わないから自分を弟子にしてくれ、と言う。彦一は、取り合わないが……。
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