翌日、幸子をようやく東京に帰した道夫は、その足で雅子のもとへと向かう。一度は道夫を疑い、実印を返してもらおうと思っていた雅子だったが、道夫に抱き寄せられ、その意思を変えてしまうのだった。
その頃、東京に戻った幸子は、フジ子(夏川結衣)に退職の意思を伝える。仕事を辞め、道夫の傍にいたいという幸子。そんな幸子に、フジ子は8年前から自分の心に住み続けているという男性の話を始める。
その夜、帰京した道夫は、弓子(南野陽子)の料亭で、雅子の実印を手に顧問弁護士の横田(升毅)と会っていた。雅子の承認済みだと嘘をつき、店の名義変更を依頼する道夫。全身の毛穴が開くような感覚の中、道夫は書類に実印をつく。
数日後、道夫の企みを、夫・伍一郎(団時朗)から聞かされた雅子は愕然。すぐさま道夫の部屋を訪れ、「弁護士に相談して警察に行くわ。覚悟しておきなさい!」と捨て台詞で去って行く。その錯乱ぶりを目撃していた隣人の岡野(石井正則)に、「あの人、自殺してしまうかもしれないよ」と呟く道夫。
その数日後、フジ子が道夫のもとを訪ねてくる。幸子が出版社を辞めたと報告に来たのだ。社長室で道夫に親しげな弓子の姿を見たフジ子は、嫌悪感を露わにする。雅子が遺書めいた書置きを残して失踪したのは、この日の午後のことだった。だが、伍一郎は警察に届けることなく、その翌日、道夫の店を訪れると、「雅子が書置きを残して姿が見えなくなったため、自殺をするかもしれないので探している」と告げる。「年下の悪い恋人に何千万円も貢がされて騙されたと泣いていた。心当たりはないか?」と続ける伍一郎だったが、道夫は冷静に否定。伍一郎はそのまま帰って行くのだった。
居合わせた幸子は道夫を問い詰める。昨夜、道夫は幸子の部屋にやってくることはなく、代わりに岡野に伝言を頼んでいたのだ。さらに、幸子は道夫の腕と手の甲に貼られたバンドエイドにも疑念を抱いていた。女にひっかかれた痕ではないかと疑う幸子に、傷は酔って倒れたときにできた傷だと言い訳する道夫。「僕はこの世に君だけしかいない。信じてくれ」と必死に語るものの、まだ半信半疑の幸子に、道夫は「婚約しよう」と告げる。その言葉に、笑顔を取り戻す幸子。
そして、雅子が失踪してから一週間後。御岳で雅子の遺体が発見された。房江(余貴美子)から雅子が首を吊って自殺したとの報告を受けた桑山(小林稔侍)は、道夫の犯行だと確信。8年前の事件で、自分が彼を逮捕しなかったことを深く悔やむ。
同じ頃、幸子は道夫から婚約指輪を受け取り、二人は正式に婚約した。祝杯をあげる二人の前にフジ子が現れる。雅子が遺体で発見されたと伝えに来たのだ。重い表情で席を外す道夫。残された幸子に対し、フジ子は「おめでとう。佐山さんはあなただけの人になったわね」と無表情で祝福する。その後、店を出た道夫は幸子の手を握り、結婚式について饒舌に語る。道夫への疑念を振り払い、幸せな結婚を夢見る幸子。そんな二人の姿を離れた場所から凝視するフジ子で……。
夜光の階段 TOPへ
タグ:夜光の階段