「特別犯罪対策室」の設置を主導したのは、絵里子の同期で参事官補佐の野立信次郎(竹野内豊)だ。野立は、警視庁に集まった記者に、「特別犯罪対策室」が科学捜査などの専門的捜査で凶悪犯罪に対応していくチームであることを説明した。
再び刑事として勤められることに喜びを感じつつ、絵里子は「特別犯罪対策室」に配属されることになった刑事たちと対面する。だが、エリートの集まりだと聞いていたそのメンバーは、朝起きられないために科捜研から放り出された木元真実(戸田恵梨香)、組織に属することに嫌気がさしている片桐琢磨(玉山鉄二)、生活安全課からやってきた警視庁一のうっかり者という異名を持つ男・山村啓輔(温水洋一)、やる気だけは人一倍ある新人刑事・花形一平(溝端淳平)、暴力事件を起こして組織対策課を追い出された岩井善治(ケンドーコバヤシ)と、お世辞にも精鋭とは呼べないような刑事たちだった。
捜査一課初の女性係長となった絵里子の存在は、狙い通り、マスコミ受けもよかった。警視庁刑事部の幹部、丹波博久刑事部長(光石研)や参事官の屋田健三(相島一之)は、たとえ「特別犯罪対策室」が失敗に終わっても野立の失点になる、とほくそえんでいた。
そんな中、荒川の河川敷で身元不明の男性の焼死体が発見されたとの通報が入る。死体は、上半身だけが丸こげで片腕が折れているという奇妙な状態だった。絵里子は、真実や片桐らとともにさっそく現場へと向かった。が、捜査一課の刑事たちから邪魔者扱いされ、追い返されてしまう。捜査一課係長の小野田忠(塩見三省)は、捜査一課は男の中の男の集まりなのだから引っ込んでいろ、と絵里子に言い放った。
ほどなく、被害者の身元が判明する。被害者・前田悟は、闇金業者だった。科捜研の鑑識官兼監察医の奈良橋玲子(吉瀬美智子)は、死因は心臓麻痺だが、胸部の皮膚から爆発時に発生する化学合成物質が付着していたことを絵里子に報告する。前田は、死ぬ直前、現場にあった鉄塔に登っており、心臓麻痺を起こして死亡後に落下したこともわかっていた。
やがて、前田が何者かに脅されて鉄塔に登らされたことを示す証拠や、前田と同じように、上半身だけが丸こげになったホームレスの焼死体が見つかっていたことも明らかになる。絵里子は、これが同一犯による爆弾を使った連続殺人事件であり、犯人は実直な技術者である可能性が高いこと、さらに近いうちに必ず第3 の犯行が起こることを推測する。
犯人の手がかりを求めて刑事たちが聞き込みに回る中、真実は前田の携帯に残った犯人のものと思われる音声データを分析。声紋から、犯人のおおよその身長と年齢を割り出した。
そして、絵里子の推測どおり、新たな犠牲者が出た。被害者の小島文彦(中村靖日)は銀行員で爆弾を装着されたベストを着せられ、自分の銀行に押し入るように脅されていた。パニックに陥り銀行から出てきた小島は、偶然居合わせた絵里子と野立に助けを求める。しかし、間もなく爆弾は爆発。絵里子と野立の目の前で小島は爆死する。
闇金、ホームレス、銀行員、と一連の事件の被害者には、接点がないように思われるが、片桐らが調べるうち、闇金の顧客リストの中に、ホームレスと接点があった野垣泰造(武田鉄矢)の名前を見つける。野垣は、化学薬品を扱う工場を経営していたが、資金繰りが立ち行かなくなり工場閉鎖に追い込まれていた。被害者は、その件で野垣から恨みを買った人物だと推測される。
そんな野垣を任意同行したのは、絵里子ではなく小野田だった。丹波に指示された小野田は、野垣の取調べも任される。自分たちが掴んだ事件の捜査権を奪われた絵里子は、それでも冷静に自分たちは独自に捜査を続けると宣言。事件は全貌を見せないが、小野田班の家宅捜索により野垣がすでに4番目のターゲットに爆弾ベストを着せていることがわかった。しかし、ターゲットの詳細、爆弾の解除方法は謎のままだ。当の野垣は、小野田班の取調べをのらりくらりと受け流し口を割ろうとしない。そんなとき、野垣が刑事に時間を尋ねる。質屋に流してしまい腕時計を持っていないという野垣に、刑事は時間を告げる。
ターゲットの安否が気になる中、絵里子は片桐が見つけてきた野垣の腕時計を手にすると、自分が野垣を取調べると言う。自分こそプライドが高く技術力を誇示するタイプの野垣と対等に話ができるのだ、と自信を覗かせる絵里子。小野田は苦々しいながらもそれを認める。
野垣と対峙した絵里子は、腕時計を野垣から見えるように置く。それをチラリと見る野垣。その腕時計も絵里子自身の時計も、時刻は11時過ぎだった。絵里子は、FBI仕込みの交渉術で野垣と対等に話をするが、爆弾の解除方法を聞きだすために仕掛けた大胆なブラフ(はったり)を野垣に見抜かれる。さらに、メモを落としたことで未だターゲットが特定できていないことも知られてしまう。
追い込まれた絵里子とは対照的に余裕を取り戻した野垣は、絵里子の時計が12時を過ぎているのを見ると意気揚々と話し始める。そこへ、飛び込んできた片桐が、光協化学の社長・野口葉子(峯村リエ)が爆死したと伝える。それを聞いた野垣は、自分の工場がつまづくきっかけを作った野口を5年前から恨んでいたのだと言い、さらに得意げになって爆弾の解除方法についても話し始める。
それを聞いた絵里子は、ポケットから携帯電話を取り出すと、電話の向こうの相手に野垣の会話が聞こえたかと確かめる。通話相手は、岩井だった。岩井は爆弾処理班とともに野口の側にいて、絵里子からの情報を待っていたのだ。野口は、寸でのところで爆発から逃れられた。
爆弾は12時に爆発しているはずなのに――野垣の脳裏に疑問がよぎったとき、絵里子が言った。野垣と自分の時計を15分進めておいたのだ、と。
絵里子が片桐らと打った大芝居は、野垣だけではなく、小野田ら捜査一課の刑事、野立、真実をもだまし切った。室長就任から数日にして、「特別犯罪対策室」のメンバーたちは、絵里子の存在の大きさを意識し始める。
一方、仕事を終えた絵里子は、軽やかな足取りで街を歩いていた。そして、立っている人影を見つけると、パッと花が咲いたような笑顔を見せ駆け寄る。労働者ふうのいでたちをしたその男性・池上浩(丸山智己)も絵里子に微笑みかける。視線を交わしあうふたりは、恋人同士のように幸せそうな雰囲気で……。
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