この本は、旅の女が山賊に、縛られた夫の前で暴行されるという出来事を基に展開する心の深層を描いた作品。気になって本を開いた晶子は、いつの間にか物語の中に引き込まれていった。
縛られて身動きの取れない夫・武弘の目の前で、山賊・多襄丸に暴行された真砂。まもなく、現場となった藪の中には、縄が解かれた状態の武弘の死体が発見される。物語は、武弘の死因に関しての様々な証言が飛び出すのだが、場所が藪の中とあって、何が真実なのか分からない。事故死なのか、刺殺なのか、それとも自殺なのか―。
晶子、藤尾、節子の3人は、それぞれ性格の異なる真砂となって、自分の思いを語り始める。やがて、妄想の中、3人の争点は、屋敷を巡る意見の対立となり、お互いの心の中の疑惑や不信感をさらけ出し、けなし合いを始めてしまう。
本を読み終えた3人は、なぜ草太郎が自分たちに『藪の中』を読ませたのか、首をひねった。一体、草太郎は、何を望んでいるのか。晶子、藤尾、節子の3人は、全ての答えが、残る最後の1冊の本に隠されているとにらんだ。
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