この事態を食い止めるため、草太郎の手紙類を発表したいという晶子。だが、これに激しく反発した節子は、晶子の話を最後まで聞かず、書庫から次の本を手にとって家を飛び出した。
草太郎のそろえた8冊目の本は、太宰治の『女生徒』だった。この本は、父親がいない思春期の女生徒の甘酸っぱい心象風景を描いた作品。人気のない夜の公園にやって来た節子は、ひとりで父親の死の謎を解こうと本を開いた。
眼鏡を掛けていることにコンプレックスを感じている女生徒(高橋真唯=二役)は、お年頃になったこともあり、様々な空想の世界で遊んでいた。庭で仕事をしている植木屋(栗原寛孝)に片思いをしてみたり、素敵な下着を付けて大人の女の雰囲気を楽しんだり―。電柱にぶつかってようやく現実の世界に引き戻された女生徒は、学校で美術の先生(松尾英太郎)にモデルを頼まれ、またまた空想の世界をさまよう。そして、最後に、亡き父のことを思い出し、美しく生きたい、と誓うのだ。
闇が白み始めた頃、家に戻った節子は、文庫版の『女生徒』を読んだらしい晶子に声を掛けられた。大きな出版社の社長に相談に乗ってもらっているという晶子は、節子に手紙の一件は3人で相談して決める、と告げる。これを聞いた節子は、涙を浮かべながら、誤解していたことを晶子に謝った。そして、3人は、お互いに力を合わせてこの家を守ろうと約束するが―。
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