この本は、彫刻家で詩人の高村光太郎と妻・智恵子のラブストーリーで、妄想や幻覚を起して理性を失い狂気となった智恵子を、光太郎が愛し続ける、という内容。智恵子が光太郎を置いて先に逝ってしまった、と節子から聞いた藤尾は、すぐに本を受け取って読み始めた―。
無邪気でくったくがなく、まるで幼女のような智恵子と光太郎が初めて結ばれたのは、アトリエの中。智恵子から生きる力を吹き込まれた光太郎は、意気揚々と創作を開始する。生き生きと作品に向かう光太郎を、幸せな表情で見つめる智恵子。だが、精神に異常をきたした智恵子は、光太郎の愛に包まれながら天国へ旅立つ。その後、光太郎は、智恵子を思い浮かべながら最後に裸婦像を完成させて亡くなるのだ。
死んで消滅した智恵子の肉体と魂を、彫刻と詩で永遠のものにした光太郎。この作品について話を始めた晶子、藤尾、節子の3人は、19もの長編、いくつもの短編を残した草太郎の作品の中に、光太郎が智恵子を永遠のものにしたのと同じものがあるのではないか、と推理した。
互いに自分の母親を思い浮かべた3人の謎は、さらに深まって―。
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