教授・佐川文彦(時任三郎)は、死因がクラッシュシンドロームではないかとの見解を示す。助教・夏井川玲子(矢田亜希子)は、クラッシュシンドロームは別名を「挫滅症候群」といい、事故などで身体が長時間圧迫された後に急に開放されることで引き起こる症候だと説明。地震災害の被害者が救助後に突然死することが続き、広く知られるようになったという。
そんな中、佐川はその証拠ともいえるアザを女性の足に認める。すると、それを見た佳奈子は動揺し黙り込む。
その頃、実験室では、作業に集中する技官・蕪木誠(泉谷しげる)の側で、ゼミ生・桐畑哲平(遠藤雄弥)、羽井彰(佐藤智仁)がデータ分析に精を出していた。
解剖終了後、佳奈子は大己と亮介に、女性の足のアザが自分の母親が亡くなったときのアザにそっくりだったと話す。15年前、心不全で亡くなったはずの母親の足にアザがあるのを不審に思った佳奈子は、大人たちに訴えるが相手にされなかった。それが未だに気になっているという佳奈子に、大己は今からでも死因を調べられるのでは、と声をかける。
そして、かつて母親・雪子(片平なぎさ)が勤めていた工場にやって来た大己、亮介、佳奈子は、当時を知るという古株の作業員・ジン(平泉成)を紹介される。佳奈子は、雪子はもちろん自分のことも覚えていたジンに、雪子が工場で亡くなった日のことを知りたいと訴える。そして当時、同じ工場で働いていた八木(勝村政信)という人物のことを聞き、自宅を訪ねる。しかし、現在、駄菓子店を営む八木は、雪子とは仕事の担当が違ったため接点がなかったと言う。
その後、気になることがあると言ってどこかへ行ってしまった大己を残し、亮介と佳奈子は大学に戻ってくる。
大己は、雪子が作業に携わっていたパイプ椅子が納品された会社を訪ねていた。会社の会議室には、15年前に購入したという椅子がズラリと並び、大己は、その1脚1脚に座り何かを感じようとする――と、そのうち時間が過ぎ終バスを逃してしまう。
翌朝、工場の片隅で寝ていた大己に、佳奈子から連絡が入る。雪子が使用していた手袋から検出された成分の分析結果を知らせる電話だった。大己は、その中にシールの裏にある糊の成分が含まれることが気にかかる。やがて、ある確信を得ると、佳奈子にこちらに来るように言う。
大己は、やって来た佳奈子を連れ再び八木を訪ねる。そして、事故があった日、雪子は工場にいた八木と残業をしていたのではないかと切り出す。当日に納品された椅子の検品シールに雪子の筆跡があったこと、雪子の手袋に作業上付着するはずがないシールの糊の成分があったことを挙げると、八木は口を開く――。
あの日、八木がパイプ椅子の納品に向かおうとすると雪子に呼び止められた。椅子に貼られた検品シールが古い規格のままになっていたからだ。時間がないから見逃してくれという八木を、雪子は叱咤。自分もやるからと言って、就業後にも構わずシールの貼り変えを手伝ってくれたのだ。数時間後、貼り変えは終了し、八木は片付けを雪子に任せると納品に向かう。
ところが1時間後、工場内に戻って見ると、雪子は資材に下半身を挟まれ倒れていた。八木が資材をどけると雪子は意識を回復し、元気な様子を見せる。それでも心配した八木は雪子に病院へ行くようにすすめるが、雪子は大丈夫だからと繰り返し、八木に帰宅を促す。
しかし、それが雪子の最後の言葉となってしまう。自分が余計な仕事をさせたせいで心臓発作を起こしたのではと思うと、怖くて言い出すことができなかったと言う八木。佳奈子は八木に、もっと早く話して欲しかったと言いながらも、雪子の死因はクラッシュシンドロームだっただろうと明かす。
その後、工場に戻った佳奈子は、大己から冊子を渡される。それは、幼い日の佳奈子と弟の写真が貼られたアルバムだった。雪子は、そのアルバムを眺めながら、ひとり昼食をとっていたのだ。自分や弟以上に、母子で過ごす時間の少なさを寂しく思っていたのは、雪子だったのだ。改めて母の思いを知った佳奈子の目から、涙があふれ落ちる――。
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