同じころ、殉也は昴と会っていた。持っていた航空券を殉也に見られてしまった昴は、聖花(内田有紀)と一緒にパリ旅行に行く、と嘘をついた。殉也は、聖花が歩けるようになっただけでなく、歌を歌ったりするまでに回復していることを昴から教えられ、驚きを隠せなかった。そこで殉也は、聖花と結婚しないのか、と昴に尋ねた。昴は何も答えなかった。殉也は、そんな昴に、いつか4人で会えたらいいな、と告げる。
子どもたちに呼ばれた殉也は、昴と別れてそちらに行こうとした。その背中を見つめているうちに、自分の気持ちを抑えられなくなった昴は、殉也を呼び止めると、ずっと思いを寄せている人がいる、と告白した。聖花を愛したことは1度もない、という昴の言葉に戸惑う殉也。しかし昴は、それ以上何も言うことができず、その場から去ってしまう。
佳音は、戻ってきた殉也のようすがどこかおかしいことに気づく。殉也は、佳音を安心させようと、微笑んでみせた。そのとき殉也は、式場の上階にあるバルコニーに聖花が立っていることに気づく。聖花は、殉也のことを見つめていたかと思うと、ゆっくりと手すりを乗り越えて飛び降りた。異変に気づいて走り出していた殉也は、ギリギリのところで落ちてくる聖花を受け止めた。だが、その衝撃で、殉也は聖花を抱いたまま倒れ、頭部を打ってしまう。殉也の頭から流れる血が石畳に広がっていた。佳音は、殉也に駆け寄り、彼の名前を叫び続けた――。
殉也は命こそ取りとめたものの、意識を取り戻さないままだった。佳音は、そんな殉也にオルゴールの音を聞かせ続けた。かつて、聖花のためにそうしたように…。
佳音が、訪ねてきた耀司と一緒に病室を出た間、殉也とふたりっきりになった昴は、殉也に話しかけた。ずっと思っている相手というのは殉也であること、聖花とふたりでパリに移り、もう二度と殉也には会わないつもりでいたことを。昴は、殉也が目を覚ますことを祈り続けた。
佳音や昴の祈りが届いたのか、やがて殉也は意識を取り戻した。だが、事故の後遺症で、記憶を失っていた。佳音は、退院が許された殉也を家に連れて帰ると、献身的に身の回りの世話を続けた。
耀司が働いている工場を訪ねた池田(豊原功補)は、会社を辞めてフリーランスになったことを耀司に告げると、いつかふたりの記事を書かせてほしい、と続けた。希望を捨てずに生きている人間の姿を書きたいのだという。耀司は、去っていこうとする池田を呼び止めると、「何があっても、人は生きていくしかないんですね」と声をかけた。
佳音は、殉也の記憶を取り戻すために、美月(香椎由宇)にも協力を求めた。殉也に、楽しかったころのことを思い出させようとしたのだ。しかしそれは実を結ばなかった。美月は、一緒にいた時間の長さには何の意味がないことを改めて感じ、殉也への思いを捨て去ろうと決意していた。
佳音は、殉也が自分のために作ってくれた曲を弾いて聴かせようとしたが、譜面が読めないため、思うように弾くことができなかった。だが、これがきっかけになり、殉也は、自らピアノの前に座って「いつくしみ深き」を弾くようになった。
佳音は、殉也を外に連れ出し、ベンチで手品などを見せた。その際、殉也は、佳音に向って微笑んだ。佳音は、大喜びだった。
そんな佳音たちの姿を見つめていた耀司は、義道神父(内藤剛志)の教会を訪れ、心から佳音に幸せが訪れることを祈った。
公園で風船売りの姿を見た殉也は、聖花のことを思い出す。家に戻ると、聖花のことを探し始める殉也。その姿を見ていた佳音は、昴に連絡を取り、殉也と聖花を会わせようとする。
佳音は、殉也に聖花が好きだったカサブランカの花束を持たせると、家を出て教会に向った。殉也は、やってきた聖花にその花束を手渡し、微笑んだ。そのとき、窓から吹き込んだ風が楽譜を吹き飛ばした。それを拾って、ピアノ前に置くと、殉也に弾くよう促す聖花。それは、殉也が佳音のために書いた曲の楽譜だった。たどたどしくその曲を弾いているうちに、しだいに記憶が蘇えってくる殉也。やがてすべてを思い出した殉也は、聖花を残したまま、家を飛び出した。
殉也は、佳音を探して必死に走り続けた。教会のベンチに座っている佳音を見つけた殉也は、彼女を固く抱き締めた。佳音の目から涙が溢れた。
聖花は、寂しげに公園のベンチに座っていた。そこにやってきた昴は、持っていた赤い風船を聖花に握らせて微笑んだ。
美月は、教会でオルガンを弾きながら子どもたちと一緒に歌を歌っていた。義道神父も、その姿を笑顔で見守っていた。
耀司は、まだ仕事をしていた。雪が降ってきたことに気づいた耀司は、空を見上げた。
佳音と殉也は、クリスマスのイルミネーションが美しく輝く街を歩いていた。ふたりは、雪の降る道を、しっかりと手を繋いで歩いていき…。
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