そこに、看護師の 聡子 (氏家 恵) と 千夏 (秋田真琴) がやってくる。聡子によると、紗綾が集めた脳外科の医師たちが全てキャンセルになったというのだ。紗綾は大学から圧力がかかったのかもしれないと副市長の 蓮見 (陣内孝則) に連絡を入れる。しかしそのとき、蓮見は衆議院議員の 松永 (品川 徹) の事務所におり、秘密の計画を進めていたのだった。
航平は病院内の機材を見たいという昌江に付き添っていた。「皮肉よね。市民病院には設備はあるけど人はいない。私たち開業医には設備がない」と昌江。航平はその言葉を聞き、ある考えが浮かぶが…。そこへ看護師の 田中愛子 (菅野美穂) がやってくる。昌江を探しているという愛子を検査室内へ連れて行く航平。すると、昌江が機材の陰に倒れていた!航平と愛子が懸命に処置を施すが、意識の戻らない昌江。そこへ、仙道が血相を変えてやってくる。脳外科医・遠藤紗綾 (緒川たまき) の診断によると、昌江は脳幹出血を起こし、このまま意識を取り戻さなければ遷延性意識障害、いわゆる植物状態になる可能性があるという。仙道は眠ったままの昌江の枕元に、8歳で亡くした息子・高志の写真を飾った。
その後、紗綾は仙道に「自力呼吸が弱くなる昌江に人工呼吸器をつけて延命処置をするかどうか決断するように」と告げる。自力呼吸が出来なくなった場合、そのまま脳に酸素がいかなくなり、脳死に至る可能性が高くなるという紗綾。しかし仙道は、少し考えたいと告げる。
医局事務室では、航平と愛子、外科医・薮内 (六角慎司)、内科医・片岡 (田中 実) が仙道を心配していた。「延命処置をすれば年単位で命をつなげる可能性は高い」と薮内。「意識もなく生かされるのが耐えられないという人もいる」と片岡。「たとえ意識がなくても、そこに生きているだけで家族が救われることもある」と愛子。それぞれの思いは複雑だった。
そのとき、紗綾は母親の入院する脳外科専門病院にいた。延命処置をされ眠ったままの母。すると、紗綾の目の前に紙袋が差し出される。それは、母親が発見されたときに身に着けていた服と財布だった。
西山室市民病院の院長・柿沼 (志賀廣太郎) の部屋で、航平と紗綾と柿沼は蓮見からとんでもない事実を聞かされる。市民病院は1ヵ月後に全面的に閉鎖し、大規模なホテルを中心としたリゾート地として開発するというのだ。松永代議士の判断だという蓮見は、多くを語らずに部屋を出て行った。そんな蓮見を航平は追いかけるが、「病院閉鎖は、決定事項なので変えられない」という蓮見。その会話を、昌江のために千羽鶴を届けにきた愛子の妹・七海(黒川智花)、愛子、薮内が聞いてしまう。
「救急も産婦人科も中止し、今後は病院閉鎖。こっちがどんな思いで患者を診ていると思っているんですか!」と我慢できずに口を出す薮内。「この病院は地域医療の中心として必要」と航平。しかし、「今となっては、市民病院が潰れるか、市が潰れるかのどちらかしかない」と蓮見は土下座した。
紗綾は病院閉鎖を知り落胆する。そして、持ち帰った母親の服と財布を見つめるが、吹っ切るように袋に戻し、ゴミ箱に捨てようとしたとき… 退院したはずのマコトがやってくる。紗綾に会いに来たというマコトは赤いランドセルを背負い学校での出来事を楽しそうに紗綾に語った。笑顔で話す紗綾とマコトを、航平と看護師長・和子 (エド・はるみ) は嬉しそうに見ていた。
千羽鶴が飾られた昌江の病室。紗綾の外出中に、呼吸が止まりかけた昌江の処置を航平と片岡と愛子が行っていた。このままでは昌江は危険な状態。仙道は耐え切れず、人工呼吸器をつけて欲しいと頼む。そして、人工呼吸器をつけた昌江は安定する。仙道が病室前廊下でポツンと座っている。心配して声をかける航平。すると仙道は、息子の病気にも妻の無理にも気付かない自分は何をしていたのだろうと呟いた。そして、航平は仙道から「リビングウィル」を昌江が残していたと聞かされる。
「リビングウィル」とは、自分がどんな風に「死」を迎えたいか伝える遺言書。昌江は生前に「リビングウィル」のことを仙道に話し、延命処置はしないで欲しいと『尊厳死』を望んでいたというのだ。妻の意思を無視してしまっているという仙道。航平と別れた仙道は病室に戻り、昌江の残した「リビングウィル」の入った封筒を開いてみる。中には丁寧に畳まれた便箋が入れられていた。昌江の言葉を読む仙道は驚いたように便箋を見入る。
その頃、看護師たちが紗綾の居場所を探していた。紗綾が定期的に手術を行っている脳外科専門病院にいるのではと愛子が問い合わせてみると、紗綾の母親がその病院に入院していることを知る。
航平と愛子は市民病院へ戻った紗綾に、昌江に人工呼吸器をつけたことを報告する。すると、紗綾は昌江の件は航平に任せるという。病院を建て直すために来たのだから閉鎖するなら自分がいる意味がないという紗綾。航平は「この病院を潰したくない。病院再建を協力して欲しい」と紗綾に告げるが、「ここや患者がどうなろうと私は関係ない」と冷たく言い放った。航平はマコトと笑顔で話す紗綾の姿を思い出す。それをじっと聞いていた愛子は、紗綾は母の治療費のために働いているのでは?と尋ねる。しかし紗綾は、そんなキレイごとではなく、母親に安らかな眠りが訪れることが許せないからだといい…。
紗綾は幼いときに父を亡くし、育児ノイローゼとなった母親が失踪したために親戚の間を転々として育ったという。2年前に失踪した母親が生き倒れて発見されたが、保護されたときには既に意識を無くしていたというのだ。紗綾は母親には愛されていないと感じていた。愛子から紗綾の過去を知らされた航平は、海を眺めながら紗綾のことを考えていた。
その夜、紗綾と航平は仙道から「昌江の人工呼吸器を外して欲しい」と頼まれる。昌江の残した「リビングウィル」の内容には航平に語った内容のほかに、続きがあったというのだ。「私の希望が尊厳死だけれども、もしも、あなたがそれに耐えられないのなら、心が落ち着くまで私を生かしておいて欲しい。死んでいく私よりも、生きているあなたの気持ちを大切にしてください。あなたの哀しみは私の哀しみです」仙道は昌江の意思を尊重し、延命処置を中止したいと再度申し出る。航平と紗綾と愛子は、動揺しながらも仙道の申し出をうけいれるための話し合いをすることにする。
紗綾は捨てきれずにいた母親の服をゴミ箱へ投げ入れた。そこに航平が現れ、昌江の件は自分に任せて欲しいと頼む。しかし、「母を思い出して辛くなるとでも思った?同情しないで」という紗綾。航平はたまには弱音を吐いて欲しいと言うが、「もう終わらせる」と呟きながら紗綾は出て行ってしまう。紗綾が出ていくと同時に、ゴミ箱が倒れて中から財布から飛び出した。散らばった小銭を拾う航平。すると財布の中に古い新聞記事が入っていることに気付く。
紗綾は母親の眠る病室に勢いよく入る。そのまま人工呼吸器に手を伸ばす紗綾。しかしその直前で手が止まった。逡巡する紗綾の顔が苦しみにゆがんでいく。そして決意し、再び人工呼吸器に手が触れた瞬間… 誰かが紗綾の手を掴んだ。立っていたのは航平だ。「人はね、結局自分のことが一番なの。いらないものは切り捨てる。それが普通なの。なのに、あなたたちはバみたいに人のためにばかり動き回って… 私もあんな風に愛されたかった」母を見つめながら涙を流す紗綾。
すると航平は医局で見つけた紗綾の母親の財布を手渡す。そして、航平は古い新聞記事を読み始めた。「1993年、紗綾、東都大学医学部入学おめでとう。1998年、紗綾医師国家試験合格おめでとう。2003年、紗綾、脳外科医のホープとして紹介される。おめでとう」。航平から手渡された新聞記事を見る紗綾の目に涙が盛り上がっていく。「お母さんはあなたの消息を辿っていたんですね。これがお母さんのリビングウィルだと思います」と航平。眠る母を見つめる紗綾の目からは、涙がとめどなく流れた。
市民病院での話し合いの結果、昌江の人工呼吸器が外されることになる。眠っている昌江の身体から、人工呼吸器を外していく紗綾。昌江の「リビングウィル」を病院スタッフそれぞれが真摯に受け止めていた。
仙道が昌江のそばに座っていた。人工呼吸器を外してから昌江の呼吸は弱まり始め、数日後、静かに息を行き取ったのだ。息子の写真も昌江を見守っていた。「もう、高志には会えましたか?本当はね、毎日でも、カツオのたたきでよかったんだよ、僕は」ささやく仙道に昌江は答えない。動かぬ妻の前で、慟哭する仙道。
後日、紗綾は航平と愛子に「患者と向き合うことを知った」という。「このまま紗綾の母親には生きていてもらいましょうよ」笑顔で話す愛子に、「金にモノを言わせて、もう少し一緒にいてもらうわ」と紗綾は花のような笑顔だ。見ていた航平と愛子にも笑顔が浮かぶ。「もっと早く気付いていれば、違う形で再建に関われたかもしれない」と紗綾は愛子に手を差し出す。しっかりと握り合う紗綾と愛子。そして、航平と紗綾。紗綾は笑顔で別れを告げた。
日が変わり、ナースステーションには、医師と看護師が集められていた。市民病院の閉鎖が市議会で決定したのだ。診察室、病棟、検査室、処置室、オペ室… すべてが閉鎖され、がらんとする市民病院。航平、愛子、仙道、柿沼、片岡、薮内、圭太、麻衣、聡子、千夏が施錠される病院を無念の思いで見つめていた。
第1話 2008年7月06日 「医療は人か金か!?」 16.8% 15分拡大
第2話 2008年7月13日 「命を金で買うとき」 13.9%
第3話 2008年7月20日 「暴かれる医療ミス」 13.5%
第4話 2008年7月27日 「加害者と被害者」 10.8%
第5話 2008年8月02日 「涙の告白〜笑顔」 10.3%
第6話 2008年8月10日 「訴えられた病院」 10.5%
第7話 2008年8月17日 「見捨てられた患者」12.9%
第8話 2008年8月24日 「看護師長、倒れる」
第9話 2008年8月31日「妻の死と病院閉鎖」10.4%
第10話(最終話) 2008年9月7日
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