ある日、例によって席を外したまま一向に署に戻ってこない副署長(船越英一郎)を心配し、例によって私は携帯に連絡を入れました。すると、電話の向こうから若い女性の賑やかな声が聞こえてくる! 副署長…よもや接待など受けておられるのでは…。副署長は否定されましたが甘いっ! 接待かどうかは別として、若い女性がいる場所に副署長がおられたのは火を見るよりも明らかです。
そんなことがあった数日後、海老原健一(大橋吾郎)が社長を務める大手流通店「マルキヨストア」の生産管理部長・仁科秀夫の他殺体が空き地で見つかりました。死因が凍死だったため、上田刑事(鈴木一真)は発見現場近くの同社支店の冷凍庫で殺されたのでは…と推察したようです。が、同社に冷凍商品の偽装表示の疑いがかかっていることから、署長(萬田久子)は慎重に捜査するよう指示されました。
そんな折、田村理香子(星野真里)というコンパニオンが署に連行されました。なんでも彼女、先日私が電話をした際に副署長と一緒にいた女性だというではありませんか! ふ、副署長……これほどお若い女性と……いや、それはこの際おいておきましょう。どうやら、彼女には仁科と愛人関係にあったという説が…。
彼女は完全否定しましたが、副署長は彼女の胸元を見て引っかかられました。彼女が着けていたブローチに、仁科のワイシャツから取れたものと思われるカフスボタンとよく似た木彫りが施されていたからです。副署長は遺体の写真を見た瞬間から「被害者のカフスボタンが2つとも取れているのに、1つしか見つかっていないことが気になる」とおっしゃっていましたが、まさかこの木彫りのカフスボタンが真犯人の正体、田村理香子の悲しい過去につながるカギだったとは!! さすが副署長、事件に対する眼力は決して甘くはない…。
ある日、副署長は泥酔した理香子が桜の木に抱きつき、涙を流しながら寝る姿を目撃されました。何でも、その桜の木は彼女の両親が出会った思い出の場所だとか。しかし、母・桜子は理香子を妊娠した直後に父親に捨てられたという…。母親はひとりで彼女を生んで育て、もう二度と会うことはない捨てた男のことを一途に愛し続けた末、2年前に病死したそうです。男と女の関係は複雑なものでございますな、副署長…。
後日、マルキヨストア各支店の冷凍庫の一斉捜査がなされました。しかし、仁科殺害に使用された形跡はひとつも見つかりません。副署長は「ハナから冷凍庫を使わなかったのではないか」と考え始められたようです。ちょうどそのとき、副署長は平松刑事(宇梶剛士)から、ガイ者のポケットから見つかった例のカフスボタンの材質が桜の木だとお聞きになられました。桜の木と聞いて、副署長は理香子の両親の思い出の桜の木を思い浮かべられたご様子。カフスボタンも理香子のブローチも、その桜の木で作られているのでは…?
折しも「東京に戻る」と挨拶をしに来た理香子にそのことを話すと、彼女はあっさりと認め、2つとも母親の手作りだと話したそうです。彼女は母親の死後、父親がマルキヨストアの関係者だと直感。コンパニオンとして参加した流通業パーティーで出会った仁科にカマをかけ、ブローチについて話したところ、驚いた顔を見せたとか。しかし、彼女がもう一度会おうとした矢先、父親かもしれない仁科は殺されたというのです。
それと同時に、副署長は遺体発見現場近くの公園でのボヤ騒ぎの件を思い出していました。仁科殺しの当日、マジックショーの煙を近所の住民が火事と勘違いした一件であります。その煙がドライアイスでは…? 副署長の推理は的中しました。公園の蓋付ゴミ箱からマジックショーの業者が捨てた大量のドライアイスが発見されたのです! つまり事件当日、ゴミ箱は即席冷凍庫と化していた。これこそが仁科が凍死した原因かもしれません。
そのころ、提携業者がマルキヨストアの仁科に指示されて商品の偽装表示を行ったことを告白しました。年のせいか、最近妙にトイレが近くなってしまった私が用を足しに赴きましたところ、個室からこそこそと話す副署長、平松刑事、上田刑事の声が漏れ聞こえてくるではありませんか! 副署長、またよからぬことを考えておられるのでは…。私は副署長に決済作業を促し、事件から目を逸らさせるよう尽力致しました。が、副署長は…。
「俺の我慢もここまでだっ!!」
ついに事件の真相を見通してしまわれた…。ふ、ふ、ふ、副署長…。鬼の近藤の居ぬ間に、副署長は海老沢社長のもとを訪れていました。実は、例のカフスボタンは海老沢のもので、理香子の存在をネタに偽装表示の件を黙認するよう迫ってきた仁科と公園で揉み合ううち、取れてしまったのです。海老沢は頭を打って気絶した仁科が死んだものと思い、仁科をドライアイスが捨てられたゴミ箱にいったん隠しました。その後、仁科は凍死。死体を別の場所に移すために戻ってきた海老沢は、そこで初めて自分のカフスボタンが無くなっていることに気付き、偽装工作のために仁科のカフスボタンを2つとも引きちぎったのでした。
海老沢は自首を決意しました。が、なぜこれまで自首しなかったのか…。愛し合いながらも桜子と別れることになった海老沢は、桜子、そして娘である理香子のことを人知れず愛し続けていました。娘に犯罪者が父親だと知らせたくはない――そんな思いが、海老沢の出頭を遅らせてしまったのです。しかし、もう安心です。副署長のおかげで、海老沢と理香子は長い時を超えてお互いの愛を確認し合いました。めでたし、めでたし……いや! 私も決して甘くはありませんぞ、副署長。副署長が本日の決済をすべてさばくまでは、口が裂けても「めでたし」などと言いません! よろしいですな、副署長?
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