「なぜ、漂着死体が発見された前日、喫茶店『ビーベリー』のコーヒーカップは温まっていなかったのか?」
このところ、副署長(船越英一郎)は娘のはるかちゃん(永井杏)と上手く行っていないとか。父親としての立ち回り方に、副署長は日々頭を悩ませているようです。それはごもっとも。が、私としては同時に“副署長としての立ち回り方”にも頭を悩ませてほしいところでございます。
まぁそれはさておき、ある日非番だった副署長は行きつけの喫茶店『ピーベリー』へお出かけになられたとか。マスター・尾崎義男さん(田村亮)がその日仕入れたばかりだという“ピーベリー”という珍しい豆で煎れて下さったコーヒーに舌鼓を打ちながら、開店時間の午前11時から2時間、話に花を咲かせたそうで…。なんでも尾崎さんも早くに奥さんを亡くされた上に、娘さんがいらっしゃるそうで、副署長とは似た境遇。それを聞いた副署長の心がなお惹かれたのは無理もない話でございます。
ところが翌日、高村恭一(辻村綾二)という水回り修理工の水死体が見つかり、彼が前日の午前9時半頃に『ピーベリー』を訪れていたことが判明したのです! 死亡推定時刻は午前11時から午後1時の間。当然、副署長は尾崎さんのアリバイを証明されました。が、尾崎さんは副署長が警察の人間だったと知るや、態度が一変。急に冷たくなられたのです。その変化の理由が気になってしまわれた副署長。
しかも前日、“ピーベリー”の前に飲んだコーヒーの味がいつもと違ったことまでもが気になる、とおっしゃられる! 副署長によれば、カップが温まっていなかったのが原因だとか。それが事件と一体どんな関係があるというのやら……日本茶党の私としては皆目見当もつきません。が! それが本当に今回の事件、さらには尾崎父娘の“ある過去”に関係していたとは…!!
副署長の“トイレ”の回数と時間は恐るべきスピードで増えていきました。私がチクリと釘を刺しましたところ、副署長は「前立腺炎」などとあからさまにも程がある嘘をおつきになられる! しかし、鬼の近藤時男’s eyeはお見通しです。副署長はコソコソと独自捜査を進めておいででした…。そして、高村が約1カ月前に排水工事に訪れて以来、『ピーベリー』の常連になっていたこと、普段は笑うこともなく何を考えているか分からなかったこと、以前から申請していた休日を上司に取り消されたことが原因で大暴れしたという情報を掴んでおられました。
さらに、平松刑事(宇梶剛士)らから重要な手がかりを入手したのです。実は、尾崎さんの娘・美加さん(内田もも香)は10年前に盗難バイクのひき逃げ事故に遭って死亡していたのです! 結局、ひき逃げ犯は捕まらないまま、5年前に時効を迎え、尾崎さんは警察に対して激怒していたとか。しかも、尾崎さんも目撃したそのひき逃げ犯の鼻の横には、高村と同じくホクロが! 轢き逃げ犯は高村だったのでは!? ――副署長は“高村殺しの犯人=尾崎義男”という図式への確信を固めつつありました。
副署長は再び尾崎さんのもとを訪れました。尾崎さんは運輸会社のドライバーをしていたころ、娘の美加さんと上手くコミュニケーションが取れずにいたそうです。やがて美加さんは家を飛び出してしまった。ところが7年前、突然戻ってきて、「父さんのそばで喫茶店を始めたい」と言ったそうです。その矢先、尾崎さんのためのコーヒーカップを買いに行った帰り、美加さんは尾崎さんの目の前で轢き逃げされてしまった! 尾崎さんは娘の夢を叶えるため、コーヒーのことを学び、喫茶店を開いたのだとか。副署長は同じ父親として、尾崎さんの胸中に深く同情したようですが、やはり例の図式は拭えなかったようです。
あくる日、鴨川上流へと向かう高村のバンが殺された日の午前10時15分、オービスに引っかかっていたことが判明しました。さらに、高村が毎年、美加さんの命日に休みを取っていたことも明らかになりました。それだけではありません。高村の遺体の作業ズボンのサイドポケットからコーヒー豆が発見されたのです。そのコーヒー豆は、事件の日に尾崎さんが副署長のために初めて袋から出した“ピーベリー”だったのです!
「俺の我慢もここまでだっ!!」
やはり…そう来ましたか、副署長…。副署長は私がトイレに行っている間に、別の“トイレ”へと姿を消してしまっていました…。副署長が向かった“トイレ”は『ピーベリー』でした。副署長は尾崎さんが犯人だと確信していました。経緯はこうです。尾崎さんは高村を喫茶店の裏で気絶させた後、高村の作業服を着て、彼のバンで鴨川上流へ。その途中、わざとスピード違反をして、オービスに写真を撮らせたのです。上流に到着した尾崎さんはバンを止め、あらかじめ用意しておいた車に乗り換え、店に戻りました。
ところが、副署長が開店時刻早々に来店したため、コーヒーカップを温める時間も、作業服のズボンを履き替える時間もなかったのです。その後、尾崎さんは副署長に「ピーベリーを豆から挽く」と言って店の裏へ行き、高村を絞め殺した上、ピーベリーのコーヒーを作りました。豆がサイドポケットに入ったのはその時だったのです。尾崎さんはそのことに気付かないまま、ズボンを高村の遺体に着せ、夜を待って死体を河原に投げ捨てたのでした。
復讐を遂げたものの、尾崎さんは罪を犯した苦しみに苛まれていました。副署長から、高村が同じように苦しみ、美加さんの命日に休みを取って墓参りをしていたことを聞かされた尾崎さんは、さらなる心の痛みを感じたようです。やがて、尾崎さんは自首しました。もちろん、裏で副署長が動いたことは内密でございます。副署長は前立腺炎で“トイレ”に通い詰めていただけ――不本意ではありますが、私も今回はそんな嘘をつき通そうと思います。しかし副署長! 私も、そうそう何度も嘘はつけませんよ。いいですかっ?
File.1 2008年07月3日 「なぜ、コンビニ立てこもり犯の手にしていた包丁には、店内の誰も刺していないのに血痕が付着していたのか?」 12.4%
File.2 2008年07月10日 「なぜ、人気漫画家は、殺された叔父の遺骨を
タクシーの中に置き忘れたのか!?」 11.6%
File.3 2008年07月17日 「なぜ、殺された人気コラムニスト胃袋からは
長ネギと九条ネギの2種類が発見されたのか!?」 11.6%
File.4 2008年07月24日 「なぜ、あの近藤警務課長が制服を脱ぎ捨てて
河原町署から飛び出していったのか?」 10.9%
File.5 2008年07月31日 「ストーカーを殺した女は、なぜ1万6800円もする安眠枕を通販で五つも買ったのか?」 12.8%
File.6 2008年08月7日 ;">「なぜ、漂着死体が発見された前日、喫茶店『ビーベリー』のコーヒーカップは温まっていなかったのか?」 12.6%
<File.7 2008年08月14日 「偽装問題で揺れる大手スーパーの重役は、なぜ、真夏の熱帯夜に凍死したのか?」
File.8 2008年08月21日 「なぜ、面影寺の跡取り息子が、沢渡神社の石階段の下で死んでいたのか?」
File.9 2008年08月28日 「ひき逃げ事件を目撃した学童擁護員は、なぜ嘘の証言をしたのか?」12.2%
File.10 2008年09月04日 「ネットカフェの防犯カメラに映った女は、なぜ、香水の残り香とホットケーキを個室の中に残して消えたのか?」
タグ:その男、副署長